インプット&アウトプット


mixiでは金曜日が「ODF」と呼ばれる特別な日となっているらしい


ODFとはOne Day Freeの略である。技術者が自分の研究のために丸一日を自由に使える日を示す。別名「お願いしてもダメよフライデー」とも呼ばれているという。それぐらいmixiのようなIT系の企業では技術者が頼りにされていて、何かあったらすぐに他の部門から仕事を頼まれる社風になっていたのだろう。


似たようなシステムで有名なのがGoogleの「20%ルール」である。同社では労働時間の20%を自由な研究に当てることができる。ネット系、IT系の企業では技術者(エンジニアと呼んだ方がよいのかもしれない)の創造力が業績に直結すると考えられているからこうした仕組みが用意されているのだろう。


では「ODF」にせよ「20%ルール」にせよ、技術者たちはどのようにして過ごしているのだろうか? ひたすらに何かコードを書いているのだろうか。あるいは技術書を読んだり、ネットを見たりして最新の技術や自分が関心を持っている領域の知識をインプットしているのだろうか。


普段の仕事がどちらかといえばアウトプットオンリーになりがちだから、恐らくはせっせとインプットに励んでいることと推測する。じゃないと、たぶんアウトプットするための原資が枯れてくる。それぐらいインプットは大切だ。


「そんなの外から何かを取り込む必要なんてまったくないよ。次から次へと書きたいことが自分の内から溢れ出てきて、それを抑えるのに苦労しているんだから」。なんて物書きも確かにいるけれども、それは百万人に一人クラスの特別な人である。とりあえず自分のやっている仕事領域に関して言えば、何かを書いて生業を立てている人はたいてい、常に何かをインプットし続けているはずだ。よくは知らないけれど、おそらく詩人だってそうだと思う。


この場合、インプットするものは何も読みものだけとは限らない。私のように人の話を聞いてインプットとし、その話をおもしろく、わかりやすく、読んで何かが残るように(なかなか書けないけれど)アウトプットすることも一つのパターンだ。インプットする対象が特定の人の話ではなくて、街のざわめきやあるいは自然の物音であれば、アウトプットされるテキストは詩になったり、もっと表情豊かな文章となるのではないだろうか。


あるいは世の中には、せっせとおいしいもの(あるいはマズいもの)をインプットしては、その時に五感で感じたすべてをコラムやエッセイとして書き出している方もおられる。小泉武夫氏や山本益博氏などがその典型だろう。以前のエントリーでも書いたけれど、自分の場合食の分野に関してはたいてい何を食べてもおいしいと感じてしまう舌の持ち主なので、こうした方面で書くことを仕事にはできそうにない。


とはいえ五感で感じることができるものならあらゆるものがインプットの対象になる。だから音楽を聴き分ける耳が優れてていて、それを文章化できるひとなら音楽評論家になることができる。あるいは触覚に秀でていて、微妙な触感の違いを言葉に表わすことのできる人なら、これまたいろいろな方面で書き仕事をして食べていけるに違いない。


もちろん自分にはせいぜい人並みの視覚ぐらいしかないなあ、なんて人だって何も諦める必要はない。とりあえず本を読めれば最低限のインプットはできる。問題はその先である。


読んだら書けるか? そうは甘くない。
聴いたら書けるか? そんな訳がない。
食べたら書けるか? とんでもない話。
嗅いだら書けるか? こいつは難しい。
触れれば書けるか? 至難の業である。


インプットされたものをアウトプットするためには、いったん自分を通す必要がある。こればかりは右から左へといった案配にはいかない。たとえば気に入った作家の本を読んで、それを書き写す。これも一種のインプット/アウトプットではある。浅田次郎氏などはこの作業を「写経」と呼び、文章修業の一つの方法として重視されている。この考え方については同意する。昔、コピーライター駆け出し時代には、よく秋山晶土屋耕一仲畑貴志らボディコピーの名人といわれる人たちのコピーを写経した。それによって得られるものは確かにある。


しかし、あくまでもそれは練習である。自分なりのアウトプットをするためには、やはり自分なりのインプット→<ごにょごにょ>→アウトプット回路を確立しなければならない。問題はこの<ごにょごにょ>の部分なのだ。そのごにょごにょ具合に個性がでる。また、このごにょごにょは経験に大きく左右される。だから勉強が大切なんだと思う。


といったことぐらいは、20年ほど書く仕事をやってきてようやくわかってきた。そして自分の場合はインプットの質が高ければ(=インタビューでうまく相手から話を引き出すことができれば)、ごにょごにょも活性化しやすいこともわかってきた。が、未だにこの<ごにょごにょ>を手なずけられていない。


このさき、うまく思い通りにコントロールできるかどうかさえわからないが、自分の中に確かにある<ごにょごにょ>が最近、とても好ましく思えるようになってきたことだけは確かだ。ただ歳を取っただけかもしれないけれど。




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