男性用補正下着は、なぜ売れる


をんなもすなるガードルを、おとこもしてみむとてす


やれ、苦しや。と普通はなるはずなんだけれど。全体的に男性用の下着市場が伸び悩んでいる中で、補正機能が付いた下着が売れているらしい。「おなかのたるみを小さくしたい」とか「ヒップのラインをキレイに見せたい」(日経産業新聞2007年10月16日付け)といえば、女性ならではの願望だったはずだが、今や男性の多くが同じ願いを共有しているという。ほんまか?

実はこうした補正下着は90年代にも一度売り出された。しかし結果はすぐに市場から消えていった。理由は締め付けの違和感。ガードルなどを着慣れた女性と異なり、下着の締め付けになれていなかった男性は見向きもしなかった。
(上掲紙)


ということは、この15年ぐらいで男性が締め付けになれたのだろうか。あるいは少々の締め付けを我慢してでも見た目を良くしたいと考えるようになったのだろうか。これはサラッと読み流せない問題が裏に隠れているようにも思う。


いきなり強引な仮説を立てるなら、この背景にはネットの普及があるのではないか。


要するにこういうことだ。つまり今だって男性が締め付けを心地よいなどとは決して思っていない。しかし、締め付けを我慢するのと、「あの人、たるんたるんでカッコ悪いわね」などと陰口を叩かれるのを我慢するのとでは、まだ締め付け辛抱の方がマシと考える男性が増えている。


問題は、なぜガードルをはいて締め付けなければならないほどに、男性の体がたるんでしまったのか、である。それがネットの普及だと考えるのはかなり突飛かもしれない。


しかしである。90年代初めと今の決定的な違いは何か。少なくとも男性(しかも体形を気にしがちなオフィスワーカーや学生)に限るならば、以前と比べて圧倒的に増えているのがパソコンの前で過ごす時間のはずだ。これまでに何回も言ってきたことではあるが、人が一日に使える時間は誰でも24時間しかない。ということはパソコンに向かっている時間が増えれば、それまで別の何かをするために使っていた時間が削られているはずだ。時間の使い方には厳然たるトレードオフが成立するから。


パソコンを使い出すまでは、外で運動していたなどというほど単純な話ではない。しかしじっとモニターに向かって(おそらくは少し前屈みになって=お腹に肉をだぶつかせて)座っていることには、腹部をはじめとして臀部の力をだらけさせる効果がある、というのはあながち間違いではないと思う。


個人的には、男性が「ガードルの締め付け感」に慣れたとはどうしても思えない。そうじゃない。「締め付け感」がどうたらこうたら言ってられないほど、たるんでしまっている男性が増えていることが、こうした体形補正下着が売れている背景としてあるのではないかと考える次第だ。


ということは補正下着以外にも、いろいろビジネスチャンスがあることが見えてくる。たとえば、今はほとんど女性専用と化している『30分・コンビニフィットネス』である。本格的にフィットネスクラブへ行くとなると、行き帰りも含めて結構な時間がかかるから「それはちょっとめんどいなあ」と考えているのは女性も男性も変わらないはず。だからコンビニフィットネスに対する男性のニーズはきっとあるだろう。


あるいは、もっと手軽に家でできる男性のための腹筋用ツールがあってもいいんじゃないだろうか。はたまた時間がない人のためには、一日わずか5分ぐらいでも運動効果が抜群にアップする『加圧ベルト』を、ボディフィット&ヒップアップのためのツールとして打ち出す手もある。コンビニの弁当だって、男性向けのヘルシー(でもボリュームはあるよみたい)なものを開発してはどうなのだ。


他にもどこかのIT企業が採用していたけれども、お腹とお尻の筋肉をいつもちょっと緊張させておくバランスボール型チェアなんてのを本格的に開発しても良いと思のだが。


いずれにしてもたるんだ腹をいくらガードルで抑えたって、そんなのは本質的な問題解決にならない。だってねえ、それでいくらパッと見がスリムに見えて、女の子によく思われて「じゃあ、いいよね」「ふふふ」みたいな状況になったときに、ズボンを脱いだら補正下着、ではいかんのではないのだろうか。






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