今年のトレンド


環境保護のためなら日常生活が不便になってもよい:61.7%


昨夜「地球危機2008」という番組が放送された。古館伊知郎が司会を務めた環境問題を真正面から取り上げた番組である。1月4日といえばまだお正月のおめでたい気分のままの方も多いはず、そのゴールデンタイムに4時間ぶち抜きでこうした問題提起型の番組が放送されるのは極めて異例のことだと思う。


テレビ局に対してはやらせ問題から偏向報道までさまざまな批判があるが、それでも時代の流れを敏感に読み取る力を持つ人材が多数いるのも事実だ。おそらくはそうしたトレンドに敏感なプロデューサーの中で「環境問題を正面から取り上げた番組を正月の特番として持ってきても視聴率を取れる」と主張する人が出てきたのではないか。


局としては大きな賭けである。ちなみに他局が同じ時間帯にどんな番組を放送していたかといえば
毎日テレビ「新春オールスター!ハプニング大賞2008」
関西テレビ志村けんのバカ殿様!」
読売テレビ「愛と勇気のマル秘実話映像」
となる。いずれも従来のお正月特番としては定番といっていいだろう。これを見てもテレビ朝日の突出ぶりがよくわかる。


それでもあえてテレビ朝日は超重量級の内容をぶつけてきた。番組にはきちんとスポンサーもついた。この番組が実際にどれぐらいの視聴率を取ったのかは知らない。自分自身もこの番組を最後まで見続けたわけでもない(9時からは『のだめカンタービレ』にチャンネルを変えちゃったし)。


とりあえず途中まで見た限りでは、番組で取り上げられていた内容のほとんどは知っていることばかりだった。たとえばエベレストの氷河が年々減り続けていること、ツバルをはじめとする南海の島々が海に沈みかけていること、洪水などの異常気象が増えていること。番組案内によればカスピ海が干上がっていることも取り上げられたようで、これもたしか以前に新聞で読んだことがある。


ただし知っていることだとはいえ、それをテレビ的に演出を施された映像で見ると強烈なインパクトがある。環境問題についてはレスター・ブラウン博士の『地球白書』を読んでいるのである程度頭の中の知識はあるつもりだったが、映像の力はやはり強い。環境についてこれまであまり関心がなかった方にとっては、昨夜の番組はかなりショッキングに映ったんじゃないだろうか。


そこで冒頭の数字に戻るわけだけれど、これは日経MJ新聞が行なった消費者調査の結果である。1月1日付け正月特別編集号の巻頭特集、タイトルが「エゴイストからエコイストへ」と付けられた記事で、環境がいま重要な関心事となっていることが明らかになっている。


もちろん、このアンケート結果をテレ朝の関係者が知っていたとは思わない。あの番組自体はたぶん最低でも半年ぐらい前から企画されていたはずだ(だからこそ、テレビ関係者の中には時代を読む嗅覚に優れた人がいるんだなと思うわけだけれど)。だから今はまだ大きなうねりとまではなっていないけれども環境問題に対する関心は今後、もっと高まっていくのだと思う。そしてそのトレンドはおそらく、決して後戻りすることはない。


ヨーロッパの人はほぼ間違いなく、日本人も大多数の人が今のままのライフスタイルを続けることは不可能だと考えているはずだ。あの楽天的なアメリカ人だって半分ぐらいの人は、現状の環境ダメージがきつい社会が永遠に持続可能だとは思っていないだろう。同じことは中国やインドなどいま経済が急成長している国々の人たちも(全員ではないにせよ)きっと感じている。


このままではダメだと言う共通認識は少なくともできつつある。が日経MJ新聞の記事には「エコを前面に打ち出しても売れない」というメーカーや販売現場の声が未だにあることも紹介されていた。ここで注意すべきは、こうした声は「これまでのところ」という留保付きで考えること。大切なのは「これから先」の流れである。


もしこれまでは「エコを前面に打ち出しても売れな」かったのなら、それにはいろいろな理由が絡んでいるはずだ。その最大のものが消費者の問題意識がまだ熟成していなかったことであり、これはクリアされつつある。とすれば、次はどういう製品やサービスがエコにつながるのかをきちんと説明すればいいわけで、そう思ってテレビを見ているとコマーシャルの内容もエコ方向に大きくシフトしてきていることがわかる。


今年はいよいよ京都議定書で決められた温暖化ガス削減目標に向けて現実的に取り組まなければならない年でもある。その意味では日経MJが打ち出した「エコイスト」は注目のキーワードになるだろう。そして「エコ」が今年のビジネスチャンスを象徴するキーワードにきっとなると思う。



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