情報格差がもたらすもの


新幹線ならエクスプレス予約である


これでたいていの場合、プチ幸せを確保できる。理由はいくつかある。まず一番には自分の座りたい席を席番(縦列の中のどこか)に加えて、横方向についてもAからEまでの好きな席を選ぶことができる。しかも予約時に、どの席に予約が入っているかまでチェックすることができる。当然、間違っても両隣に人がいる三人がけ席の真ん中に座らされることなどない。狙い目は(あまり真似されると困るんだけれど)東京へ向かうなら偶数号車の最前列もしくは奇数号車の最後列である。


この席だとトイレに立つ人が横を通ることはまずない。だってトイレはまったく反対方向にありますからね。最後尾、または最前列を選ぶのにはもう一つ理由がある。ここだと「のぞみ」の場合、コンセントがある確率が高いからだ。最近、iBookのバッテリーが弱ってきているので、京都・東京間がギリギリ持つかどうかといった案配になっている。これがコンセント付きの列車ならバッテリー切れを気にすることなく原稿仕事をできる。


さらにである。ややリスクはあるけれども、C席を押さえる。三人掛け席の通路側だ。なぜか。まず二人がけ席だと隣に人の来る確率が高い。さらに窓際だとトイレに立つ時が面倒である。だから三人掛けで通路側を選ぶのだが、これが最後尾、最前列となると真ん中の席は空いていることが多いのだ。だから少しばかりゆったりできる。カバンを真ん中のB席に置いておくこともできる。原稿を書くために資料をちょっと見たりするのに都合が良いのである。


まあ、もっと細かくいうなら個人的には11号車の最後列がベストだと思っている。その理由は? 皆さん、考えてみてください。


しかもエクスプレス予約のメリットは、これだけにとどまらない。料金も若干ではあるが安くなるのだ。さらにである。京都〜東京間をエクスプレス予約で10往復すればオマケが付いてくる。一回分のグリーン席アップグレード権を得ることができるのだ。グリーン料金は5000円ぐらいのはずだから、この無料アップグレードを計算に入れるなら、エクスプレス予約は1回あたりさらに500円のディスカウントとなる。おトクである。


まだある(って、別にJR東海の回し者じゃないんだけれど)。エクスプレス予約はケータイからできる。しかも発車5分前の列車までオッケーである。なんでそんなギリギリの列車のチケットを買えるかといえば、窓口で並ぶ必要がないからだ。自動券売機はもちろん、エクスプレス予約専用のチケット受け取り機がたいてい改札の横にある。便利である。


クレジットカードを差し込んでというのが少し面倒だけれど、ものの1分ぐらいでチケットは出てくる。その上(しつこいって)、このチケット受け取り作業さえもう少ししたら不要になるらしい。要するにあらかじめICカードを持っていてエクスプレス予約をすれば、そのカードがチケット代わりになるという。


というエクスプレス予約に付随するさまざまなメリットをご存知の方がどれだけいらっしゃるのだろうか。未だに窓口で行列に並んでいる方を見ると、これは不公平だよなあとつくづく思う。そして少し大げさにいえば、こういうのが「情報格差」なんじゃないかとも思う。


確かにエクスプレス予約を使おうと思えば、最初にクレジットカードの申込をしなければならない。こいつはちょっと面倒かもしれない。でも、今どき誰でもカードぐらい持っているのだから、カードを手に入れること自体にはそれほど高いハードルはないだろう。


じゃあ予約はどうか。慣れていない人にとってケータイからの予約は鬱陶しいかもしれない。特に号車、席番、C席などを特定する座席指定となると少し複雑な操作を求められる。しかしPCからはネットを普通に使っている人ならたぶん誰でもできる。難しいことは何もない。ユーザーインターフェイスもまあまあ使い勝手よくできている。


もしかしたら、このエントリーを読んだ人でエクスプレス予約を使っていなかった人が今後、愛用するようになるかもしれない。


さて情報格差である。ここまで書いてきたことは、とても些細なことだ。とはいえ知っているのと知らないのとでは、同じ対価を払って(厳密にいえば窓口で当日買う人の方が少し高いお金を出すことになるはずだ)新幹線に乗るのでも、得られる価値が少し異なることになる。わずかだけれども情報による価値格差が生まれている。


ここで、ついこの間のNHKの事件(→ http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080117i316.htm)を思い出すのである。彼らは株価上昇ほぼ間違いなし銘柄の情報を手に入れた。その情報を使って、いくばくかのリアルなキャッシュを手にした。それが許されない行為であることは言うまでもないが、この行為の根底にあるのも情報格差だろう。


では機関投資家のケースはどうなるのだろうか。彼らが違法行為をしているとは思わない。しかし一般投資家に比べれば、機関投資家が得ている情報は明らかに多く、緻密なはずだ。そうした情報を得るためにコストをかけていることはある。が、同じ投資家として考えた場合にはここには情報格差があるとはいえないだろうか。


あるいは一般投資家の中でも格差は確実に存在する。たとえば板倉雄一郎氏のように的確に企業価値評価をした上で株式投資をしている人と、そうじゃなく雑誌の記事や「これで儲かる」系の本に乗せられて(でも、自分ではいっぱしの分析をしているつもりで))自己流もしくは誰それ流の投資をしている人の間にも明らかな情報格差がある。エクスプレス予約などはささやかなものだが、ことが株式投資ともなると格差が生み出す所得格差はそれこそ億単位にまで膨張する可能性もある。


というぐらい情報格差は、今後の社会の格差をより熾烈化するドライバーになるのではないか。努力して知恵(情報を自分なりに消化してレベルアップしたものかな)を身につければ、情報格差を利用して資産を築くこともできるのかもしれない。そんなことをエクスプレス予約した新幹線に乗っているときに思った。




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高島屋の福袋に隠された狙い」
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昨日の稽古:富雄中学校武道場

拳立て、指立て、腹筋
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