飛び込み営業の請け負いは成功するか


ひと月あたり約200万円


アルファグループの人材サービス子会社A・R・Mがユニークなサービスを始めた。飛び込み営業の一括請け負い事業である。

受託額が5人のチームが2〜3ヵ月業務を請け負った場合、月あたり約200万円を目安とする。出来高制にも応じる。営業を担当するスタッフの平均月収は25〜35万円程度(日経産業新聞2008年5月21日付20面)


いつもFMO(=First Most Only)な企業を探している(→http://www.insightnow.jp/feature/)ために、この記事がアンテナに引っ掛かってきた。前掲紙には「体力と根気が必要な飛び込み営業を専門に受託する事業は珍しい」とある。確かにその通りだろう。


では、なぜ、これまで飛び込み専門の営業受託がなかったのだろうか。A・R・M社はもしかして、ブルーオーシャンを見つけたのだろうか。同社のプレスリリース(→ http://www.alpha-rm.co.jp/img/080521_news.pdf)を見ると、狙っているのは、保険業界や通信業界のようだ。ということは基本的にBtoCの飛び込み営業ということになる。


であるならば、スタッフの教育次第では成功する可能性はあるのかもしれない。実際リリースには成功事例も掲載されている。これによれば、ケーブルTV加入者の開拓では、1ヵ月で1,600世帯との契約を完了している。チーム編成が30名だから一人あたりざっと50件。実働20日とすれば、1日2件の成約である。なかなかではないか。


これを出来高報酬制で回していたとすれば、発注サイドは元がとれた可能性が高い。また自社で営業パーソンを抱えることに比べれば、明らかにメリットはあると言えるだろう。なぜなら営業パーソンを自社採用するということは、固定経費が増えることを意味する。しかも、いったん社員として雇ってしまえば、目標数の新規開拓が終わったからと言って「もう、明日から来なくていいから」というわけにはいかない。契約条件によるけれども、正社員採用であれば一応は一年ごとに昇給も見込んでおかなければならない。経費は膨らむ一方であり、だからといって雇い入れた営業パーソンが期待通りの成果を常に出し続けてくれる保証などどこにもない。


ところが、これがアウトソーシングとなれば、完全に変動費である。しかも出来高報酬制なら、この変動費は販促コストとして見ることもできるだろう。発注側からは使いやすいシステムだといえる。


問題は、飛び込みを請け負う営業パーソンのモチベーションとマナーだろう。まず何らかのインセンティブがなければ、自ら飛び込み営業などをやってみようと思う人はなかなかいないはずだ。それぐらい「飛び込み」はきつい仕事である。


そこで、まず何よりもインセンティブが必要となる。これは成功報酬制じゃないと、誰も手を挙げてはくれないだろう。十分なインセンティブが保証された上で、次は徹底したマナー教育が必要である。


なぜなら、もしかしたら請け負いという条件が、飛び込み担当者のストレス軽減に働く可能性が大いにあるからだ。「どうせ、請け負いなんだから、そんなに必死になることないじゃん(だから、飛び込み先で嫌なこと言われたって気にしない、気にしない)」といったマインドセットを採るわけだ。


そりゃ確かに、それぐらい気軽に取り組めば、たとえ飛び込み先でけんもほろろの扱いを受けたとしても、それほどひどいダメージを受けることはないだろう。しかし、そんな軽い気持ちで営業していては、受注につながらない可能性も高くなる。


だからマナー教育が重要になる。この場合のマナーには営業メソッドが含まれる。いわゆる営業のノウハウとなるわけだが、飛び込み営業についてのノウハウなどというものが、果たして存在するのかどうか。もし、そのようなノウハウをA・R・M社が持っているとしたら、これはかなり画期的だ。だからこそ同社は、このような突拍子もないサービスを始めたという可能性は確かにある。


実はアルファグループに関しては、何年か前(上場直後ぐらいだろうか)に、現会長さんに毎月お会いして徹底トップインタビューを数ヵ月間実施したことがある。この方は、学生起業家からそのまま起業したなかなかのアイデアマンである。彼なら、この手のビジネスを成功させる可能性もあるかもしれない。


個人的には、飛び込み営業については、請け負いならやってみても良いかもと思う。実際、昨年の暮れにほんの少しだけやってみたことがある。気楽にやるなら、それほどストレスがかかるわけではない。ただし、自分の仕事でやれるかといえば、それは難しいような気がする。たぶん、必死になるだろうし、ということは精神的なプレッシャーがもかかるわけで、すなわちストレスフルである。というポイントをついてのビジネスなら、成功する可能性はぐっと高まるのではないだろうか。







昨日のI/O
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『ガラスの靴/安岡章太郎
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「利はリユースにあり」
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□InsightNow最新エントリー
「名ばかり手帳問題とマクドナルドの巧妙な戦略」
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昨日の稽古:富雄中学校体育館
・縄跳び
・基本稽古
・ミット稽古(回し蹴り・前蹴上げ・膝蹴り・内回し蹴り・前蹴り)
・組手稽古