抽象思考vs具象思考

仕入れ総額132,000円の品物を、売値で全体の3分の1売り、売値の1割5分引きで全体の5分の2売りました。残りはすべて2割5分引きで売ったところ、全部を売値で売ったときより利益は30,400円少なくなりました。実際の利益はいくらですか(『中学への算数』6月号19ページ)。


ややこしい問題である。一度読んだぐらいでは、何をどう考えていいのかがよくわからない。二読、三読してようやく求められている内容を理解し、さてと考えてみることしばし。小学生には反則技となるが、とりあえず方程式を知っている身としては、ではxとyを使って解けばよいのだなと思いつく。


そこで売値をx、仕入れた個数をyとして式を立ててみた。
x×1/3y+0.85x×2/5y+0.75x×(y−1/3y−2/5y)ー132,000
=x×yー30,400


この式を解けば、最初に予定していた売値の総額(x×y)は出てくる。これが出れば、答えにたどり着くことはできる。実際にそうやって出した答えを確かめてみると、ちゃんと合っていた。パチパチ。


しかし、である。このやり方も一案ではあるが、息子に教えてやるなら、もっとわかりやすい方法があるはずだと解説をみると、ちゃんとある。解説に曰く「こういう問題は面積図を書くと、すぐにわかります」と。あっ、そうか! 確かに図を見れば、当初から減った利益の分が、全体のどれぐらいになっているかが一目瞭然だ。実にスマートというかエレガントとというか。


「ええか。あんな、予定していた売値で全部売ったときのことを最初に考えるねん。売値を長方形の縦、個数を横にして図を書いてみ。個数の3分の1がここや。個数の5分の2は、売値の1割5分引きやから面積でいうたら、こんだけや。わかるやろ」


「なんや。めっちゃ簡単やん」


といった会話が交わされ、息子は新しい解法を身につけた。めでたし、めでたしである。一方、この問題を自分で解き、さらに解説を読み、息子に説明することが自分にもちょっとした発見があった。タイトルに付けた抽象思考vs具象思考である。


つまり、方程式という便利なツールを知っていると、それに頼ってしまうリスクがあることに気付いたのだ。方程式はモノごとを抽象化して考えるのには、とても使いやすくできたツールである。問題を式に落とし込み、条件が揃っていればたいていは解くことができる。だから、冒頭の問題を見たときも、直感的にこれは方程式で解けると判断した。


この判断自体は間違っていない。実際、ちゃんと解けたわけだ。ところが、方程式化して考え始めると、当たり前だけれど面積図のことは思いつかない。それがちょっとマズいんじゃなかろうかと思う次第。なぜなら、面積図で考えると、最初の予定に比べてどれぐらい利益が減ったのかが、はっきりとひと目でわかる。しかも計算もウンと楽だ。


ところが方程式化して考えてしまうと、最終的に数字はきちんと出てくるけれども、その数字の意味が見えない(賢い人には見えるのかもしれないけれど、私にとっては面積図の方がわかりやすかった)。


だから、何でも方程式で考えちゃイカンという話ではない。算数的にみても、あるいは数学的に考えても、どちらかの解法が間違っているわけではないのだ。ただ問題の捉え方、あるいは問題の理解の仕方が方程式法と面積図法では違うように思える。


たとえるなら経営者が必要な見方は面積図法的視点であり、財務担当者に求められるのは方程式的視点ではないのだろうか。あるいは以前にも触れたことがあるけれども、マイクロソフトGoogleの入社試験で必須の能力は、どちらかといえば面積図法的な考え方なのではないか。そんなことを思った。


しかし、何のことはない。息子の受験勉強に付き合うことで、自分もちゃっかり勉強させてもらっているわけだ。にしても、中学校の入試問題って、ほんとに難しいです。




昨日のI/O

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昨日の稽古:

・腹筋