四十歳からの空手10・蹴りで往復ビンタ
とにかく組手が下手だった
下手などという生易しいレベルではない。相手と向かい合っても、まったく何もできないのだ。入門して半年ぐらい経った頃だろうか。コンタクトレンズを入れるようにしたので、相手がちゃんと見えてはいる。それが逆に緊張につながっていたのかもしれない。
以前なら、相手が少々手を動かそうが、足を動かそうがそんなの見えていないのである。少し高度な表現をすると「技の起こり」などまったくお構いなしというわけだ。もっとも、私を相手に技を出してくる先輩などおられなかったことも確かだけれども。
では、一体どんな組手をしていたのか。
ある先輩は、ひたすら叩かせてくれた。手を開いて「さあ、どうぞ思いきり突いてきてください」というわけだ。これはこれで、先輩なりの稽古をされていたのだと思う。かなり高度な鍛錬法には、相手が攻めてきた部位に瞬間的に力を入れて、攻撃を受け止めるというものがある。
言うまでもないことだが、力を(気持ちも)抜いている場所に突きや蹴りが入ると、たとえそれが子どものものであっても結構効いたりする。逆にいえばしっかりと力を入れて(気合いも入れて)いれば、そこそこの攻めなどはね返すことができるということだ。
あるいは、いくらこちらが下手な突き蹴りを出しても、きちんと受ける稽古をされていた先輩もいた。セオリー通りにきれいな受けをされると、こちらもまったく痛くないのだ。そして受けだけで終わるのでもない。攻めを受け流されて、ほとんど棒立ちになっているこちらに「そのままじゃあ、危ないよ」とばかりに軽く上段を蹴って来られたりする(でも、きっちり当たる手前で止めてくださる)。
はたまた、何も言わずにずんずん押して来られる先輩もいた。といってがつんがつん突いたり蹴ったりされるわけではないけれども、時々前蹴りなどを出して、下がってばかりじゃどうしようもないじゃないかと無言のうちに教えてくださるわけだ。
先輩方の組手を見ていると、皆さん、動きがなめらかである。そして自分なりの得意技のようなものがあることもわかってきた。では、組手をどうやって学ぶのか。基本稽古のやり方なら、本がある。ところが組手ばかりは本では学べないのだ。だって、組手というのはパターンがあるわけじゃないから。
悩んでいるときに駅前のビレオレンタル屋さんで見つけた。極真会館のビデオである。大山倍達師のビデオ、現在の館長である松井章圭氏のビデオ、世界選手権に備えた合宿風景を映したビデオ。百聞は一見に如かずというが、本当である。動画が秘めている情報量は圧倒的で、しかもイメージとして頭の中に叩き込まれるから、その定着率も高い。
ビデオを借りて毎晩見て、期限が切れれば返して、またすぐ借りる。やりだしたら一生懸命になるタイプなので、そうやってビデオを繰り返し繰り返し見ていた。そしてある日、大阪の大きな本屋さんに行くと、何と松井章圭氏の特別ビデオがあるではないか。お値段は確か6000円ぐらいとかなり高いが故に迷いに迷ったが結局買った。
家で見てびっくりである。
松井章圭氏がいろんな技術解説をし、さらには極真会館での自らの三十人組手、四十人組手の様子がほとんどノーカットで映されている。これがすごかったです。特に四十人組手の部分が。
三十人のときは、まだかなり荒々しい組手だったのが、四十人のときにはまったく違う次元になっていることが、素人の自分にもはっきりわかった。動きにムダ、無理がなく、まったくなめらか。位取りでも相手に勝っていることが一目瞭然。だから異様なほどに静かでもある。でありながら、技は正確を極め、華麗なる上段回し蹴りで倒したかと思えば、カウンターの下段蹴り足払いからの決めの突きでどんどん一本を取っていく。
中でもしびれたのが、回し蹴りから蹴った足を引かずに横蹴りにつなげ、さらにはそのまま足を引かずにもう一度コンパクトにうねるように放たれた回し蹴りである。まさに蹴りの往復ビンタだ。
その結果。
「これや! こんな組手をやりたいねん、オレは」と身の程知らずにも思ってしまったわけです。
昨日のI/O
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昨日の稽古:
・レッシュ式腹筋、懸垂