ファイナルが金になる


4月〜6月の経済効果、約9億円


くいだおれ太郎」さんである。道頓堀のシンボル的な存在だった、あのお人形さんの引退(=お店の閉店)が発表されたのが、今年の4月。それ以来、太郎さんはもう見事なまでにあちらこちらから引っ張りだこの人気者となった。

閉店を発表した4月以来、ビーチバレーやプロ野球を観戦し、ミュージカルにも出演。果ては別府に温泉旅行に出かけるなど話題を振りまいてきた(日経MJ新聞2008年7月28日付4面)


最終的に、どこに、どれだけの値段で買われたのかは今のところわからないが、9億円もの経済波及効果を出したそうだ。もっとも、この経済波及効果というのは、わかったようでいて実態はよくわからないのだけれど。


それはともかく「くいだおれ太郎」さんも、店を辞めるとか太郎さんが道頓堀からいなくなるといったキッカケがなければ、これほどの人気を集めることはなかっただろうし、その経済波及効果というものも生まれなかったはずだ。


そして前掲紙によれば今年の夏は『ファイナル』が人気を集めているという。例を挙げれば
映画では「花より男子ファイナル」予想興行収入70億円
イベントでは「お台場冒険王ファイナル」開幕3日間で28万人
小説では「ハリー・ポッターと死の秘宝(最終巻ですね)」初版180万部
音楽会では「サザンオールスターズ・ファイナルコンサート」


サザンのコンサートチケットなどは即日完売で、ネット上では3万円程度で取り引きされているらしい。確かに「これで最後ですよ。この先、もう見ることはできませんよ」というアナウンスには、一定の効果がある。「最後なら、見ておかなくちゃ」とか「もう見れないのなら、今のうちに行かなきゃ」といった気持ちをうまく呼び起こすからだ。


とはいえ、何でもファイナルにすれば良いというものでもない(当たり前だけれど)。たとえば、このブログも今月限りで終わります、といったところで、その価値が上がることはないし、急にアクセスが増えることもあり得ない。


では、同じファイナルでも人気が出るもの/出ないものといった違いが生まれるのはなぜだろうか。「花より男子」や「ハリー・ポッター」、サザンオールスターズなどは、すでに人気を集めていたものに、さらにファイナル効果がプラスされての大ヒットとなっているはずだ。


ところが「くいだおれ太郎」君はどうなんだろうか。決して人気がなかったとはいわないけれども、あれ程の大騒ぎを引き起こすほどの人気が以前からあったわけではないだろう。そんなに人気があって、お店の宣伝効果になっていたのなら、そもそもお店が閉店となることもなかったはずだから。


多くの人にとって「くいだおれ太郎」君は、道頓堀に行けば、特に意識はしないけれども「そこに、あるなあ」と視野に入りはするぐらいの存在だったはずだ。それが、ただなくなるというだけで人気を集めた理由がわからない。


「今だけ」とか「これで最後」に人は弱い。これは確かにマーケティングのセオリーの一つではあるけれど、それにしても不思議だ。ただ一つうまかったなと思うのは、きっちりとプレスリリースを行なったこと。おそらくは、ダメもとで流したリリースにメディアが食い付き、記者会見で大々的に取り上げられた。これが効いたことは間違いないと思う。


これが仮にチラシかなんかで「閉店記念セール」みたいな打ち出し方をしてしまっていれば、メディアにあそこまでの取り上げられ方をすることもなかっただろう。広告より広報やPRの方が、確実に効く。そんなことを学ぶ格好のケーススタディとなったのではないだろうか。



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