俺流マナー問題の本質


I, the, Jury.
オレが掟だ!


といったのはマイク・ハマーbyミッキー・スピレーンである。ハードボイルドである、カッコいいのである。などといっても「それ、だれ?」といわれることの方が圧倒的に多いわけだが、なぜかいま「俺流マナー」の押しつけが結構あるという。


たとえば。


国際線の飛行機で座席を倒したら「非常識な人だね」といわれたとか、エレベーターを降りるときに「閉まる」ボタンを押さなかったがために「閉めていけよ。マナーだろ」と叱責されたりする(日本経済新聞2008年8月4日付夕刊)。飛行機の座席については私自身も以前、イスを少し倒すや否や「わたくしは、足が長いのでイスを倒さないでいただける!」ときつくいわれたことがある。


同じ料金払ってるんですから(実際には、こちらは格安チケットだから、後ろさんの方が高いお金を払っていたのかもしれないけれど)、そりゃおかしいんじゃないの、と思ったことがある。だって、降りるときに確かめてみたら、そのおばさまが私より長身では決してなかったから。


あるいはエスカレーターの右左問題もややこしい。月に2、3回のペースで東京へ行くから、何とか慣れたけれども未だに少し戸惑う。特にヤバいのが東京から戻ってきたときの、京都駅新幹線ホームからの下りエスカレーターだ。東京から来られた方は、無意識のうちに右側を空ける。するとこちらもそれにつられて左側に立つ。そのまま意識のままで今度は在来線のエスカレーターに乗ったりすると「どこ立っとるんじゃ、オッサン」みたいな視線を若者からビシバシ飛ばされたりする。


こえぇ〜のである。


個人的には、仮に電車の中で席を倒すときには、声かけはしないものの少しずつ、遠慮がちに、ほんの少し倒したかなぐらいの角度にとどめたりする。できれば、そんなめんどくさいことはしたくないので、新幹線ではできるだけ最後尾(後ろに人が座ることがないところですね)を予約するようにしている。


ただし少し前に、前の座席の人が「座席を倒していいですか」と聞いてきた時は、すごく丁寧な人だなと好感を持った。何も言わずにガーンと思いっきり倒してくる奴に比べれば、はるかに感じは良い。よいけれど、いちいち断ってもらわなくても良いかなぐらいには思う。


ところが、いま、そうしたささいなマナー(自分でマナーだと思っているルールを含む)を破られることにいらだちを感じる人が、どうも増えているらしいのだ。


その理由についてはいろんな分析がなされている。たとえば

「自分の基準を『正しいもの』として相手を批判することで、強い立場や安心感を得ようとしているのでは」(名古屋大学教授・速水敏彦氏)
「日本では、会社や地域など小さな『世間』で通用するマナーは数多いが、社会全体に通用するマナーが確立していない」(九州工業大学教授・佐藤直樹氏、いずれも前掲紙より)。


これらの意見に加えて、特に人混みの中にいるときの緊張度が高まっているからという理由もあるように思う。もちろんはっきりとした敵意を感じるレベルではないのだけれど、かといって気を抜いて安心していられるという状況とはほど遠い。そんな状況が増えていはしないか。


駅のホームでさえ、ぼけっと立っていたら後ろから押されるかもしれないし、エレベーターの密室の中で知らない人と二人っきりになったりするのは、結構気持ち悪い時間になったりする。自然に緊張し、気分が悪くなったりする。そこへ持ってきて他人が、自分の考えている規範通りにふるまわなかったりしたら、つい過敏に反応する。そんなメカニズムが働いているんじゃないだろうか。


だからといって「俺流マナー」を押し付けるのは注意した方がいい。特に、キレやすい人が増えている状況を考えれば、仮に何かひとこというにしても伝え方を考えた方がいい。

「私は○○されたくない」と自分を主語にお願いする言い方と「あなたの行動はマナー違反」と相手を批判する言い方とでは、受け取られ方に違いがある(前掲紙)


これも、もしかしたら今の日本が、過渡期にある証なのかもしれない。仮にあと何年かして、とりあえずまわりにいる奴はわけのわからない人ばかりで、黙っていたら何をされるかわからない、などというアメリカンな状況になるとどうなるのか。とりあえず私はあなたに危害を加えるつもりはないからね、と言葉と身振りで表現するようになる可能性もある。一見フレンドリーというスタイルである。


もし日本がそこまで行ってしまうとすれば、それは相当に違和感を感じるだろうけれど、それも世代によって受け止め方は大きく違うのだろう。



昨日のI/O

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昨日の稽古:富雄中学校武道場

・縄跳び、コーディネーショントレーニン
・基本稽古
・移動しながらの蹴りの稽古
・ミット稽古
・ミットを使った受けの稽古
・組手稽古