お一人様は移動時間で勝負




東京出張なら往復6時間


自宅のある奈良からの移動時間(円グラフの黒い部分)である。今は、のぞみなら京都〜東京間を2時間20分で走ってくれる。だから往復の移動時間もちょうど6時間ぐらいで収まるようになってきた。お一人様にとっては、この移動時間はが極めて貴重なワークタイムである。


思えば、最初に入った会社で営業マンをしていたときも、出張が多かった。何しろ得意先の所在地が仕事の多い順に、金沢、王子(東京)、名古屋、戸田(埼玉)、東大阪にときどき福山、高松、博多などである。ひどいときには東京日帰り、次の日は朝から金沢に行き、そこから新潟経由でまた東京へ戻って次の朝イチバンで帰ってくる、なんてこともあった。


とはいえ当時は出張が何よりの楽しみでもあったのだ。なぜなら列車で移動している間は、堂々とポケットベルを切ることが許されていたから(といってもポケットベルがわかる人はどれぐらいいるのだろう?)。これはかなりな開放感である。


たいていは毎晩、深夜まで残業しているので、出張時には行きの列車でぐっすりと寝ることができる。帰りは上司と同行している場合は、食堂車(昔は新幹線には食堂車がたいていつながれていた)でおごってもらって飲みっ放し、これが一人ともなればそれこそ何しても良し、である。


だから、タイミングよくスペンサーシリーズの最新刊(ロバート・B・パーカーですね)や景山民雄(惜しい人を亡くしました)などが手に入った場合は、帰りの列車が楽しみで仕方がなかった。わざわざ出張までしてクライアントと打合せした中身は当然、どこかに飛んで行ってしまっているのだが、それでも何とかなったのだ。のどかな時代だったといえるのだろう。


いま考えてみれば、出張時の列車の中で過ごす時間というのは、果たして勤務時間に含まれていたのだろうか。あの頃勤めていた会社は、中小企業だったけれども、一応きちんと出張手当をつけてくれていた。確か東京まで日帰りで往復すれば、2000円ぐらいくれたんじゃなかっただろうか。ということは、往復の列車の中でも何らかの業務に携わることが期待されていたのかもしれない。


というようなことは経営者的視点に立てば当たり前なのだが、お給料をもらってる身では、なかなかそうは考えない。出張に行く列車の中ぐらい好きにさせてくれ、それぐらい望んで何が悪い、なんて思っていたのだ。


が、これがお一人様となると、そんなことは言ってられなくなる。何しろお一人様は、自分が仕事をやらない限りは誰も替わりにはやってくれない。ということは、自分が仕事を進めなければ、当たり前だけれども仕事はちっとも進まない。


もし仕事が捗らなければ、何が起こるか。


たとえば締切に遅れる。となると信頼感を失うぐらいは当たり前の報いで、それがレギュラーの仕事だったとしても、次は自分に回ってこないリスクを抱えることになる。発注側としたら、締切を守る外注先と守ってくれない外注先がある場合、よほどクォリティに差がある場合をのぞいては、きちんと締切通りに上げてくれる相手を選ぶだろう。


最悪の場合は、締め切り遅れは罰金を科せられる可能性もなきにしもあらずだ。最初の打合せで「締切は、取材が終わってから○日でお願いします」とひと言クギをさされていたりすると、これを破るのは御法度である。だから、たまたま取材が詰まっていて、今日は東京、明日は愛媛、一日置いてまた東京なんてスケジュールの場合でも、そんな事情はおくびにも出さすにきちんきちんと約束の納期を守らなければならない。


それがお一人様の宿命である。移動時間がどれほど貴重かおわかりいただけるだろう。


仮に東京で1時間ほどのインタビュー仕事があったとする。ならば帰りの新幹線の中でがんばれば、1時間の取材テープの半分ぐらいは書き起こすことができる。あるいは原稿用紙5枚ぐらいの原稿なら、まず一本分の下書きは確実にこなせる。


これが企画書の場合、ネタがある程度頭に入ってさえいれば、構成から各ページの原稿のあらすじぐらいはまとめることができるだろう。また「アイデアは移動距離に比例するby高城剛」のである。そもそも企画自体を一人ブレストしたり、マインドマップをこちょこちょっと書いたりするのにも列車の中は最適だ。


だから新幹線では号車のみならず、席番にまでこだわるのだ。ホテルも仕事をしやすいかどうかで選ぶことになる。というようなことを、たまには何もかも忘れて、旅をしてみたいなあとも思うけれど、そんなご身分には当分なれないみたいだ。



お一人様仕事術、その壱拾伍
『お一人様は、新幹線の席番にまでこだわるべし』
※好みの席を確保する方法はこちら
http://d.hatena.ne.jp/atutake/20080122/1200952489


昨日のI/O

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