読書離れは本当か
ネットやテレビの方がおもしろい:33%
中高年が本を読まない理由である(日経産業新聞2008年9月4日付1面)。
インターネットの普及などで縮小傾向の書籍市場。2007年の販売額はピークの1996年から2割近く落ち込んだ。「活字離れ」は若い世代の傾向と思いきや、ネットマイルによると「本を読まない人」はむしろ40歳代以上に多い(前掲紙)。
あれま。ご同輩たちはあまり本を読まないらしい。とはいっても文字を読んでいないのかというと、そうでもないようだ。
40歳代、60歳代以上は「趣味」や「旅行」の本好み。いずれもネットで調べたり、同じ趣向の人と交流したりして楽しむ人が増えている分野だ(前掲紙)。
なるほど。確かに趣味や旅行の分野に関しては、圧倒的にネットの方が情報量が多く、しかも極めてニッチな分野までをしっかりカバーしている。いわゆるロングテールはネットの専売特許である。
だから、たとえば「カルロス・バルデラマが司令塔だった頃のコロンビアサッカーの、ダイレクトパスを多用したパス回しが好き。だって94年のワールドカップでは、あのペレが優勝候補筆頭に挙げていたぐらいなんだから」といった極めてトリビアなサッカーに対する趣味についての情報も、ネットなら得ることができる(って本当かな? たぶん本当だろう。それも日本語の資料だけでなく英語サイト、さらにはスペイン語(もしかしてコロンビアはポルトガル語?)のサイトまでくまなくあたれば、まず間違いなくいろんな情報を得ることができるはずだ)
ところが、こうした情報を書籍で得ることは不可能といっていい。だから秘かにいつか『秘密のベールに包まれた南米の天才・カルロス・バルデラマ』といった取材本を書きたいと思っていたりするのだけれど、そんな注文は誰も出してくれないだろうな。
冒頭の記事に戻れば、正確には中高年が「何も読まない」わけでは決してない。読むけれども、その対象が本というリアルなものに印刷された活字ではなく、インターネットというバーチャルな空間にあるデータ(=テキスト)に変わったということ。その理由はといえばリアルな本ではカバーしきれないぐらいの情報がネットにはあるからだ。
であるならば「ネット上にアップされているデータの信憑性はどうなのだ、いい加減なことの方が多いのではないのか」といった議論も出てくるだろう。が、そこでポイントとなるのが対象となる情報のジャンルである。少なくともそれが他愛もない趣味をテーマとした情報であるなら、事実関係にとやかく目くじらを立てることもないだろう。あるいは、あえて勝手なことを断言して(たとえばサッカー史上、最高のインサイドキックの使い手はバルデラマだ、間違いない。みたいな)、それに対するリアクションから始まる交流を楽しむこともアリだ。
こうしたコミュニケーションを前提とした情報のやり取りをするツールとして、ほとんどノーコストのネットに勝るメディアはない。写真だってばんばんアップできるし、もし過去のテレビ放送を録画したビデオなどがあれば、それをYouTubeに投稿することもできる。
こと趣味の分野に関しては、リアルな本はますますネットに押されていくことは間違いないのではないか。
一方で信頼性を求められる情報については、ネットを含めてその情報が公表されるプロセスでどれだけのコストをかけられているかが、一つの判断基準となっていくのだろう。経費と時間をかけて取材し、推敲を重ねて書かれたテキストには、それなりの信頼性があると評価されるはずだ。
ところで、ここ最近、30年から40年前に書かれたテキストを集中して読んでいるのだけれど(もちろんリアルな古本で)、その頃の日本語のテキストは今と比べて比喩が豊かだと感じる。これは小説に限った話ではなく、というかむしろエッセイ系の文章に比喩のうまい使い手が多いようにも思う。そして残念ながら現状のネットに書かれているテキストは、アルファブロガーの書いているものを含めても、比喩表現にまで気配りをしたものは少ないように感じる。
ネット文体とでもいえるようなものが、いま生まれつつあるのかもしれない。そもそも「ほぉ〜、なるほど。そうなのか」と納得してもらえるようないちいち比喩を考えることはとても面倒だし、だからこそ開高健も時代を追うごとに比喩のレベルが落ちていった(ように思う)。ということは、今こそ的確な比喩を使いこなすことができれば、いいじゃんと思ったりもするのだけれど(言うは易く行うは難し)。
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