誰がGMのクルマを買うのか


年間赤字3兆円


4期連続の赤字で、債務超過はすでに8兆4000億円。今期の売上は前年対比17%のマイナス。どんな会社かといえば、世界一の自動車会社である。その名をGMという。この会社の行く末にいま、世界中が注目している。


アメリカの新大統領オバマさんが、GMをどうするのか。とりあえず3月末までに追加支援がなければ倒産するらしい。GMの会長は、いま倒産するとGMだけで数兆円規模の経済的損失が出ること、さらには下請けへの波及的ダメージを考えれば、とりあえず延命させた方が政府にとっても『得』だといってアメリカ政府を脅しているらしい。ものすごい開き直り方だ。


もちろんGMが倒産すれば、アメリカのみならず日本のパーツメーカーにも相当なショックが及ぶそうだ。連鎖倒産である。だからといっていつまでもダラダラと資金を注ぎ込み、延命させるのが得策なのかどうかはとても疑問である。そこでオバマさんがどんな決断を下すのかを全世界が固唾を飲んで見守っているわけだ。


が、ここには一点、決定的な視点の欠如を感じる。


ユーザーである。あるいは(潜在)購買者といった方がより正確なのかもしれない。すなわち、これからGMのクルマを買うのは一体誰なのか。さらに突っ込むなら、この先GMのクルマを買おうという人が果たしてどれぐらいいるのだろうか?


そもそもGMは4期連続で赤字なのだ。赤字=クルマが売れなかったと短絡的にいえるわけではないが、少なくともクルマがバンバン売れたということはない。つまりGMのクルマはサブプライムローンン問題が爆発する前から、それほど売れていなかったのだ。早い話が燃費が悪かったり、デザインがもっさかったり、装備が劣っていたり、サービスが良くなかったりと人によって理由はさまざまだろうが、それほど人気がなかったのではないか。


だから、まだ中流以下の人でもローンを組みやすかった時代においてさえ、GMはダメだった。という現実がある上でさらに、今やGMは倒産寸前の会社なのだ。そんな会社が作っているクルマを積極的に買いたいと考える人が、果たしてどれぐらいいるものか。だから、このところのGMの売上は極端な右下がりとなっているのだろう。


もちろん倒産したらサポートも何も受けられなくなる、なんてドラスティックな事態にいきなりなることはないだろう。が、倒産しそうな会社と倒産しそうにない会社のアフターサービスを比べれば、当然倒産しそう(=近いうちに倒産する)会社の方がいろいろ不利な状況だと判断するのは当然のこと。今からクルマを買おうと考えている人が、とりあえずトヨタGMのどちらを選ぶかは一目瞭然ではないか。


普通に考えれば、4期連続赤字で8兆円以上もの債務超過に陥っている会社が奇跡の復活を遂げるとは考えにくい。ましてや赤字の原因となっている労組との関係も未だに何の改善もなされていない。トップがやっていることといえば、自家用ジェットでワシントンに乗り込むことを辞めたぐらい。一方で政府に対しては「我々はでかすぎるから、潰せないだろう」と脅しをかける。


これが仮に数年前、Mrゴーンが日産に乗り込んで断行した改革案のようなものを提示するなら話は別だが。少なくともいまのGMからは、そんな気配はまったく伝わってこない。


というような話は当然、オバマチームには重々わかっているはずで、だからどうするのかを世界中が見つめているということなのだろう。ほんと、どうするのだろう。GMに巨額の資金を突っ込んで救うぐらいなら、GM倒産で潰れそうな会社にその資金を出してやれば良いという話はないんだろうか。



昨日のI/O

In:
『まっ、いいか/浅田次郎
Out:
某企業・販促ツール企画構成案
帝塚山大学・高教授インタビュー原稿

昨日の稽古: