裏ターゲットを狙え


夕食の後、ほとんど毎日一本


コーラショックを飲んでいる。黒木メイサのCMがカッコ良すぎたから、では決してない。夏だからだ。すなわち食事の時には、平均して缶ビールを一本いただく。ついでにワインも少々飲む。これで頭の芯がほにょっとゆるむ。そこから眠りに就くまでに、もう少しだけ何かアルコール分がほしい。


このニーズにびったしはまったのがコーラショックというわけだ。だから黒木メイサのCMの踊りにいかれてしまったからでは、絶対にない。ときにこのコーラショック、ちょっと考えてみれば不思議な商品である。今までなぜ世の中になかったのか、と訝しんだりもする。しかも、これを出しているのはキリンだ。というのも、いわれてみれば変でしょう?


この商品はそもそも、20代から40代までを狙って出されたのだという(日経産業新聞2009年7月17日付7面)。コーラは飲む、しかしアルコールは全般的にあまり好まない。今どきの若い人たちがメインターゲットとして設定された。ところが意外に売れているのが、団塊の世代らしい。


では、なぜ団塊の世代コーラショックに惹かれるのか。その理由は、彼らこそが日本におけるコーラ第一世代だからだ。今からおよそ40年前、アメリカからコーラがやってきた。それまでの日本にはなかった、おそらくは「かっこいい」ドリンクである。これが人気を博したであろうことは簡単に想像できる。


とはいえ、団塊の世代の方々にとっては今さらコーラもないだろう。そんなものわざわざ飲む機会もないし、そもそもコーラを飲みたいとも思わない。が、それがアルコール飲料となると話は変わってくる。そういえば若い頃にはウイスキーのコーラ割りもずいぶんと飲んだ。もしかしたらあれに近い味なのだろうか、といった懐かしさも手伝って団塊の世代コーラショックを飲んでいるのだと推察する。


という説明が、実は来年ちょうど50歳になる私にもぴったりと当てはまる。だから、いくら黒木メイサをキュートだと思っていたとしても、決してCMにそそのかされてコーラショックを好んでいるわけではない。


コーラショックにおける団塊の世代のように商品開発時に設定されていた本来のターゲットとは異なるのだが、商品を売り出してみれば意外に買ってくれる層を『裏ターゲット』というらしい。


その意味ではアルコールゼロビールにも立派な裏ターゲットがいる。アルコールゼロがターゲットとしたのが、お酒は飲みたし、でもクルマも運転したしといった郊外型飲食店を訪れる客のはずだ。ところが、これまた意外な裏ターゲットを開拓している。ポイントはわずかだがアルコール分を含んでいたノンアルコールではなく、アルコール「ゼロ」に割り切ったことだ。


これにより「お酒を飲んではいけない」人たちが、このゼロアルコールのターゲットとなった。お酒を飲んではいけない人たちとは、お酒が大好きであったがために、飲めなくなってしまった人たちである。本来ならお酒を飲みたくて仕方がないのだ。とはいえお医者さんからは「これ以上飲むと、命に関わりますよ」と脅されている。故に飲めない。


が、アルコール分がゼロなら、お酒ではないという意味でお茶と同じである。堂々と飲める、というか安心して飲める。しかも各社それなりに知恵を絞り、技術の粋を尽くして可能な限りのビールテイストを実現している。安心して飲めるビール風のドリンクなのだ。これがドクターストップがかかるほどの酒好きに受けたのだろう。


という裏ターゲットを商品企画時に読めるかどうか。これはマーケティングの基本中の基本ともいえるSTPを考えるときの重要なポイントなのだと思う。つまり本線のSTPをしっかり押さえることは当然だとして、オプションのSTPまでを考えておくことができるかどうか。


逆に考えれば、それぐらい思考の幅を広げておくことが、ユーザーニーズが超・細分化された今のマーケットで成功するためのカギ、ということなのかもしれない。


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昨日のI/O

In:
『潰れる大学・潰れない大学』読売新聞大阪本社
Out:
J社さま取材記事
カカクコム内田さま・インタービューアウトライン
L社広報ご担当者さま・インタビューメモ
M社広報ご担当者さま・インタビュー記事

昨日の稽古:

・懸垂、拳立て、レッシュ式腹筋