いま、なぜ「アフリカ」なのか?



エイズ患者2200万人


サハラ以南のアフリカには、これだけの人がエイズに苦しんでいる。世界のそのほかの国々が1100万人だから、その倍ということになる。一昔前は不治の病として恐れられたエイズも、今では効果的な抗HIV薬が開発されたおかげで、病気とうまくつきあいながらの長期生存が可能となっている。


とはいえ、そうした薬が簡単に手に入る国とそうではないところがある。経済的な問題が大きく影響するために、そうは簡単に薬に頼れない人たちもたくさんいるのだ。その多くがアフリカである。


新型インフルエンザで亡くなった人がこれまでに日本で十数名、これに対してアフリカでエイズに侵されて死んでいった人は一体どれぐらいになるのだろうか。数百万人、あるいはもっとなのかもしれない。


あるいは現時点で、内戦・紛争・潜在的紛争に悩まされている国々もアフリカには多い。ざっと20カ国の人々が、そうした争いに巻き込まれ、失わなくてもよい命を日々失っている。病と争いのためにアフリカの人たちの平均寿命は信じられないぐらいに短い。最も短命なシエラレオネなどはわずかに40歳である。平均寿命が40歳ということは、それ以下の年齢で亡くなってしまう人も相当多いはずだ。


これらはすべて、遠いアフリカの国々の出来事である。だから、知らないふりをして、放っておいてもよい、のだろうか。事情はわかるにしても、では、日本にいる我々に何ができるのか、と思考停止せざるをえない、のだろうか。


そんな問題提起をしているのがCOURRiER Japon10月号である。上記のデータは、すべて同誌46・47ページに記載されている。


日本がアフリカにまったく関わりがない、などということは決してない。来年には南アフリカでワールドカップが開催されるはずだ(確定的に表現できないのには、まだ不安定要素が残っているからだ)。そうなれば日本からはまずマスコミが大挙して乗り込み、ツアー客も大勢訪れるだろう。そこで何が待っているのか。


一説によれば、南アフリカはとんでもなく危険な国といわれる。「南アフリカ 危険」でググってみればわかるように、噂レベルから滞在者のレポートまでいろいろな話が飛び交っている。その真偽はおくとして、これほどリスキーな情報にあふれている国は、世界にもそう多くはないことだけは確かだろう。「アフガニスタン 危険」といった案配で国名を変えて検索してみればよい。


しかし、アフリカに注目すべき本当の理由は、これからの日本の生き残り問題が絡んでいることにある。ポイントは中国の動きだ。中国は1955年に当時の周恩来首相がバンドン会議でアフリカの首脳と会談して以来、国のトップが頻繁にアフリカ詣でをしている。同時にアフリカの首脳たちを積極的に中国に招いてもいる。


なぜ、中国はこうした外交を行っているのか。さらに突っ込むなら、中国の隣に位置する日本は、なぜ中国のような親アフリカ外交をやらないのか。1955年といえばもはや半世紀以上も前の話だ。その頃からアフリカに目をつける中国のロングスパン思考に注意する必要がある。


つまり当時から中国は、アフリカの資源に目をつけていたのだ。四千年の歴史を持つからなのかどうかは知らないが、とにかく長いスコープで物事を考えるのが中国人の特性である。30年前にはアメリカの工学系大学にせっせと留学生を送り出したのも中国だ。その頃の留学生たちが帰国して、中国のIT産業を支えている。


その中国は半世紀も前から、いずれ世界が石油のぶんどり合戦に突入することを読んでいたとしても何の不思議もない。すでにアメリカはその頃から自動車大国となっており、豊かな暮らしの行き着く先が石油に支えられた社会であることぐらいは、きっちり見抜いていたはずだ。


また食糧問題が現実化することも読んでいた可能性がある。中国はいま、アフリカで農地開発にも手を出そうとしている。といってアフリカから搾取することだけを考えているのではもちろんなく、アフリカの人的資本への投資も怠っていない。留学生への奨学金を提供し、積極的に招く。彼らエリートがやがて帰国して指導層になったとき、中国シンパになることは簡単に想像がつく。


かたや日本はどうなのか。そもそも日本の首相がアフリカに行ったことがどれぐらいあるのか。胡錦濤主席のように単なる表敬訪問ではなく、実利の伴う交渉をした首相が一人でもいるのだろうか。


確かに遠い国だ。そこで何が行われているのかさえ、日本人のほとんどが知らないだろう。もちろん日本人すべてが、アフリカについて興味を持つ必要などない。しかし日本の将来に関わる人の中には、アフリカについて考える人がいなければならない。そして、日本では知られていないだけで、世界にはアフリカに注目しているメディアがいくらでもある。


そんなことをCOURRiER Japonの記事は教えてくれた。
レビュープラス



昨日のI/O

In:
老子
Out:
プランタン・広報さんインタビューラフ原稿
東北新社・広報さんインタビューメモ


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