国家財政の破綻リスク


人口32万人VS 1億2728万人


アイスランドと日本の人口である。アイスランドといわれても「一体、そんな国はどこにあるのだ?」と思われる方もいるだろう。位置でいえばイギリスの北北西あたり、ほとんど北極に近いところにある。ちなみに国旗はイギリスによく似ているけれど、歴史的にはデンマークおよびノルウェーと関係が深い。


この国はリーマン・ショックが起こるまでは、金融立国に成功し「国民一人当たりでは世界でもトップレベル(2006年時点で世界5位)であった(Wikipediaより)」。金融業に対して政府が後押しするなど積極的な施策をうったため金融部門が大きく伸びたのだ。その結果「産業としては金融部門の伸びが著しく、金融、不動産がGDPにしめる割合は、26%に達した(Wikipediaより)」。


これが暗転する。


金融業に頼っていた分、リーマン・ショックが引き起こした金融危機のダメージも甚大だった。そして今朝の報道では(確か日経だったと思うけれど)政府が「40万人分の預金を凍結した」とあった。人口以上の預金があるというのもおかしな話だが、同国では高金利をうたい文句にイギリスなどの外国からも預金を集めていたのだ。


それを全面的に凍結するという。恐ろしい話である。もちろん預金者の反発は強く、この先どうなるかはまだわからない。わからないけれど、考えるべきは、どうしてこのような事態に陥ったのか。その原因が、新聞記事にあったように政策の失敗だったとすればどうなるのか。


これを他山の石として日本も学ぶ必要があるのではないか。なぜなら、日本の国家財政も相当にひどい状態にあるからだ。


借金(=国債)と収入(=税収)、予算のバランスがめちゃくちゃである。例えば鳩山政権最初の予算は、一般会計総額で過去最大の92.3兆円となる。一方で税収はがくんと落ち込んで約37.4兆円。税外収入というよくわからないものを10.6兆円引っ張り出してきても、借金はさらに44.3兆円積み重なる。国家財政を家計に例えても意味はない、という指摘を受けたので、あえてそうした比喩は使わない。


けれども、尋常な状態じゃないことは誰にでもわかるはずだ。借金は、いつか、誰かが必ず返さなければならないのだから。それが嫌なら、という選択肢も確かにあるけれども、その結果アルゼンチンみたいになるのは、結局国民みんなが困ることになる。いや、アルゼンチンならまだ食糧自給率がほぼ100%に近いはずだから、最悪でも食べるものだけは何とかなるだろう。けれども食料を海外から買わなければならない日本は、一体どうなるのか。


こうした議論はあちこちで出ていて、そのたびに日本国債は日本人が買っているから大丈夫、というのが通説になっている。この場合の大丈夫というのは、いざとなったら国が国民の金融資産を召し上げるから大丈夫というぐらいの意味だろう。


しかし、ここも日本人が買っているという意味をしっかり考える必要があるんじゃないだろうか。早い話が、じゃあ国債の買い手は誰なんだということだ。少なくとも自分の回りに「私は国債をたくさん買ってますよ」という人は見かけない。だから日本人が買っているというのは、みんなのお金を預かっている日本の銀行が買っているということだ。


ここで考えるべきことが二つある。まず第一は、日本の国債が金融機関にとって本当に魅力的な商品であるなら、なぜ海外の金融機関は買わないのかということ。買わないのにはそれなりの理由があるはずで、金融機関の意志決定基準からすれば理由は一つしかない。つまり金利とリスクのバランスが悪いということだろう。現在の金利(=日本国債価格)とそれが破綻するリスクを計算したら、とても恐くて手を出せないというのが本当のところではないのだろうか。


では、仮に国債がそんなに危険な商品であるとしたら、それにもかかわらず日本の銀行はなぜ買い続けるのかが、当然次の疑問として浮上してくる。その理由は、結局みんなでババ抜きゲームをしているからじゃないんだろうか。仮に三菱東京UFJが「日本国債のリスクプレミアムバランスに鑑み、今後当行は買い増しをしない」とか「早急に売却することにした」といえば、一体どうなるのだろうか。


これまでかろうじてせき止められていた堰があふれて、一気に濁流が流れ出すように、国債暴落なんてことが起こりかねないのではないか。国家財政が失敗すれば、そうした悪夢が現実のものとなる可能性をアイスランドの例は教えてくれているのだと思う。


もっとも、日本の財政がここまでひどくなったのは、決して鳩山政権の責任じゃない。借金は、これまでの自民党政権のツケである。であるなら、そのツケによる恩恵を享受してきた自分たち自身にも責任があると考えるべきだろう。


一説によれば、国債暴落を防ぐためには、とんでもない増税をするしかないといわれる。たとえば消費税を30%にするぐらいの思い切った増税が必要らしい。それでもアイスランドみたいになるよりは、きっとましだ。日本は、食料と燃料を海外から買わなければやっていけない国であることだけは、絶対に忘れてはならないのだと思う。




昨日のI/O

In:
『中国報道の裏を読め』富坂聡
Out:

昨日の稽古: