異なるポジションでのモノの見方




このエントリーは、R+さんから送っていただいた献本『フォーリンアフェアーズ12月号』についてのレビューです。


ターニングポイントは2030年


『フォーリンアフェアーズ12月号』の特集タイトルは、The World Ahead。これから先、近未来の世界のパワーバランスについて。とても特徴的な二人のレポートが掲載されていたので、その対比をまとめてみた。


byジョセフ・ナイ氏(ハーバード大学教授)
アメリカの近未来>
◎市民が政府を信じないことを前提に組み立てられた社会である(→中国に対して非常に健全、極めて民主的と読めた)
◎高等教育に予算をかけている成果が出ており、世界の大学ランキングトップ10校のうち6校がアメリ
○経済の生産性の伸びは1.5〜2.25%に達すると見られる
△アジアに台頭により衰退感はあるが、それはあくまでも相対的な物であり、心理枠組みの変化にとどまる(→実質的には、依然としてアメリカは衰退しないとの主張に読めた)
△数多くの社会問題はあるが、直線的に悪化するとは考えにくい。犯罪率、離婚、10代の女性の妊娠などは改善傾向にある
▼債務問題は要注意で、対GDP比債務が1%上昇すると、金利が0.03%上がる
▼内向きになり移民制限をすれば深刻な状態になる(現状11.7%)

<中国の近未来>
GDPは2030年あたりにアメリカを追い越す可能性
▼一人あたり所得でみれば、21世紀半ばまでアメリカに追いつくことはない
×地域間格差など多くの社会問題を抱えている
×中華思想的文化にとらわれている


byキショール・マブバニ氏(シンガポール国立大学公共政策大学院長)
アメリカの近未来>
×今後17〜18年で経済的に中国に追い抜かれる
×本来、持てる資源の80%を中国対策に投じるべきなのに、実際には80%をイスラム対策に振り向けている(→戦略の誤りと指摘しているようだ)
×財政赤字は極めて深刻、所得レベルを超えた生活を続けるのは無理

<中国の近未来>
イラク問題では、戦略的に、アメリカをイラクに釘付けにすることに成功
○民主主義への移行は織り込み済みで、中国流に時間をかけてタイミングを計っている
○ネットユーザーの絶対数はアメリカより中国が多い
○ネット上で最も多く用いられている言語は中国語
○経済成長は独自のメカニズムに支えられており、9〜10%と高い
○一流校の次のレベルで見れば、大学教育が極めて充実(→アメリカの同レベルの大学を『破産した工場』と表現)
○アジアの若者たちの向学心の高さを評価


以上のように、ナイ氏、マブバニ氏では、ほぼ同じイシューに対しても見解はわかれる。方やハーバード、一方がシンガポールの大学教授であり、それなりのポジションからの見方ということになるのだろう。


どちらが正しい/間違っている、という話ではなく、両者の内在的論理によって見え方が違ってくることが、とてもよくわかる。両者の意見を読んだ上で「さて、自分だったら、どう考えるだろう。その論拠は何だろう」と考えを深めるためには、格好の資料だと思う。


ついでにいえば、自分なりの考え方をするときには、内田先生がよく指摘される「問題の次数を上げる」ことを意識すると良いのではないか。例えば中国が今後、経済成長を続けてGDPアメリカを抜くのはいいが、そのためにはどんな条件が必要になるのかを考えてみる。すると資源、エネルギー、環境、技術などでいくつかの付帯条件が付くことが見えてくる。


ただ一点、とても気になったのは、両者ともに日本については、ほとんど触れていないこと。

日本は独立を維持していくために中国と同盟関係を結ぶよりも、アメリカの支援を模索する可能性が高い(ジョセフ・ナイ氏、同誌、17P)

尖閣問題に関して)私にとって驚きだったのは、日本があえなく(中国の)圧力に屈して、漁船(と船長)を開放したことだ(キショール・マブバニ氏、同誌、69P)

マブバニ氏のいう「向学心の高い学生」の中に、日本の大学生も入っていてくれると良いのだけれど、どうも日本の影はどんどん薄くなっているような気がしてならない。それじゃ、いけない。次の世代のために、自分の子ども達の世代のために、米中に割って入る必要はないけれど、日本がそれなりに独自の存在感を保つためには、エネルギーや食料を安定して確保するためにはどうすればいいのか。


ナイ氏、マブバニ氏、それぞれのシナリオをベースとして、これからの日本のあり方を考える必要があると思った。




昨日のI/O

In:
『ハゲタカ上・下』真山仁
『ハゲタカ2上・下』真山仁
※400ページぐらいの文庫本を4冊、一気読みしてしまいました。
Out:


昨日の稽古:

懸垂