ナノマーケティングとは何か


四半期での売上、約1800億円。


Googleの2005年7〜9月期の売上高だ(日経ビジネス10月31日
号)。単純計算すれば、年間7200億。だが、おそらくそんな額には
とどまらないのがGoogleのすごみだろう。何しろ四半期ベースでの売上
高が、このところ連続で前年対比2倍の伸びとなっているのだから。


なぜ、そんなに売上が伸びるのか。それだけの対価を得ているというこ
とは、それに見合った価値を提供しているからだ。ではGoogleの提供し
ている価値は何か。


Googleのユーザーは二つに分けられる。企業と生活者だ。それぞれに対
して価値を提供し、対価を得ている。企業に提供している価値は広告効
果であり、対価は出稿費である。一方、生活者に提供している価値は情
報検索であり、対価は生活者の時間(=コスト)だろう。


より広告効果を高めるためには、より多くの生活者にGoogleを使っても
らう必要がある。そのためには、より精度の高い情報検索を提供する。
このシステムをブラッシュアップし続けてきたことがGoogleの肝だと思
う。


そして、このシステムの中で『ナノマーケティング』なる言葉が登場す
る。


これ、誰が言い出した用語なのかは知らない。とりあえず今(2005
年10月31日午前4時15分)の段階でググってみると、ヒットした
のは2件だけ。ということは日経ビジネス編集部による造語の可能性も
ある。
→ちなみに"nano marketing"での検索結果は、357件あった。もしか
したらアメリカで使われ始めた用語なのかもしれない。


ともあれ『ナノ』とは『マス』の対義語として使われている。では、こ
のナノマーケティングとは何か。日経ビジネスの記事を参考に考えるな
ら、Googleが可能にしたナノマーケティングには、次の2つの方向性が
ある。


一つは、特に小企業の地域限定から全国(全世界)へのエリア拡大。つ
まりこれまでなら、全国的な広告を展開する予算を持たなかったために
地域限定でビジネスをしていた企業が、ネットを使えば全国に広告を打
てるようになった。


そんなの前からバナー広告とかがあるじゃんと突っ込まれそうだが、
Googleともう一社Overtureが可能にしたのは、超低予算での広告出稿
である。自社の商品が検索されやすいキーワードを入札すれば、そのキ
ーワードが検索された時だけ、テキスト広告が表示される。これだと最
低1クリックあたり7円から出稿できる。


ページビューを集めるサイトならとりあえず目に入るかもしれないけれ
ど、クリックされるかどうかわからない(=自社サイトに来てもらえる
かどうかわからない)のがバナー広告である。これに数十万円のコスト
を出稿することと、クリックされたときだけ(=少なくとも自社サイト
には必ず来てもらえる)最低7円からの出稿費が発生する広告では費用
対効果の違いは明らかだろう。もちろんイニシャルコストだってずいぶ
ん低く抑えられる。


差別化された価値を提供できる自信があるなら、とりあえずサイトを創
って、検索連動型広告を出せば、簡単に全国をターゲットにできるよう
になったわけだ。これがナノマーケティング、その1である。


もう一つの方向性は、小企業がネットを使って地元商圏に広告を出せる
ようになったこと。前回Googleに地図検索機能が付いたことを紹介した
が、これが広告システムになっていることをうかつにも見逃していた。
http://d.hatena.ne.jp/atutake/20051025


Googleでたとえば住所を入力する。すると検索結果の最上位に「どこそ
この地図」が表示される。これをクリックすれば、そのエリアの地図が
表示される。そしてさらに、その画面から近辺のお店やサービスを検索
できる。


試しに自宅なり事務所なりの住所を入力して、地図が表示されたら、そ
こからさらにラーメン屋でも喫茶店でも検索してみてください。ちょっ
と驚きの結果ですよ、これは。


このシステムが知られるようになれば、これが地域の広告メディアにな
ることが予想される。しかも、このメディア(=検索システム)を使う
人は、特定エリアで特定のサービスや商品を探している人だ。ここに広
告を出す価値は高いだろう。


そして、おそらくここでの広告出稿コストも何円単位(ナノ単位ってこ
となんでしょう)に抑えられるはずだ。


これまでも、とりあえずネットの時代なんだから、うちも乗り遅れない
ようにとホームページを創った小さなお店はたくさんあるはずだ。とこ
ろが創ってみて、でもネットって全国、というか全世界を相手にしてい
て、あれ、うちはそんな広域を相手に商売してるわけではなくて、はて
ホームページ創って何の意味があったっけ? なんてお店も多かったは
ず。


ところが今後、Googleの地図検索連動型広告(→なかなかいい用語でし
ょう、いま思いついて勝手に付けた)を使えば、そんなお店のホームペ
ージが俄然、意味を持つことになる。これがナノマーケティングのその
2だろう。


これを世界中でやろうとしている。というか、すでにやっている。たと
えば一件あたりの収益は数円レベルだったとしても、それが全世界の無
数の商店やサービス業者からさらには小企業などから入ってくるとすれ
ば、まさにチリも積もれば宇宙にも達するのではないか。


Google、恐るべしである。




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『ゼミナール経営学入門(1〜20)』
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