『学ぼう算数』の使い方


学ぼう!算数 中学年用 上 [推奨学年3年]

学ぼう!算数 中学年用 上 [推奨学年3年]



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ある国立大学理系学生の話らしい。今月号の『VOICE』誌で『学ぼう算数』の作者・西村和雄教授が、この検定外教科書を作った理由を書いている。


西村教授の専門は経済学だが、大学生の学力低下に強い関心を持っていて『小数ができない大学生』『どうする「理数力」崩壊』となどの本も書いている。経済学は文系の中でも特に数学的能力が求められる分野だ。おそらく西村教授は大学で経済を教えるうちに学生が講義内容について来れないこと、その原因が数学がわかっていないことなどに気づいたのだと思う。
 

そして、なぜ数学力が落ちたのかを突き詰めていったのだろう。たどり着いた先が、数学教育についての学習指導要領の変化だった。


『VOICE』誌のレポートでは、小学校、中学校レベルでの算数、数学の教え方が具体的にどう変わったのかまでは、突っ込んで書かれていない。指摘されているのは「ゆとり教育」が問題の根源ではないかという点だ。


もちろん「ゆとり教育」にしても、誰かがいきあたりばったりに思いついたアイデアではない。こうした教育方法が考えだされ、導入された背景には何らかの原因やそれなりの理由があるわけで、それを否定することはできない。しかし、一方でゆとり教育が導入された結果として、学力低下が起こっていることも事実だ。


大切なのは、今から「ゆとり教育」の是非を問うことではない。是非を検証するのは誰かに任せておけばいい。それより何より放っておけないのは、現実問題として低下し続けている子どもたちの学力だ。これをどうやってまた上向きにしていくか。ポイントはここにある。


そこで西村教授が注目したのは、小学校の算数教科書だった。個人的にも息子がいま3年生で、小学校に入ったときから算数の教科書がえらい簡単になったんじゃないかとは感じていた。今の教科書は、一言で言えばうすいのだ。また寺子屋を始めたときに小学校の算数教育に関するいろんな本を読み、いまの指導体系にはいろんな問題点が指摘されていることもわかった。


だから寺子屋では、ささやかだけれど、昔風に九九を早い時期に覚えるようにしたり、九九を覚えたらできるだけセットで割り算へと進むように工夫してきた。そうやって試行錯誤してきた末に去年、『学ぼう算数』という検定外教科書に出会ったわけだ。


まず3年生用を取り寄せてみると、次のような順番になっている。
1.かけ算
2.かけ算の筆算
3.わり算
4.比
5.わり算
6.分数
7.比と分数
以下・省略


わり算は小学校でも3年生からだから、それはいいとして、わり算の次に「比」が入っている。そしてすぐに分数へと続く。確かに比や分数は概念としてはわり算と近いというか、ほとんど同じとも考えられるから、続けてやった方が確かにいい。


ところで『VOICE』の記事で西村教授は、この『学ぼう算数』を自学自習用の教科書だと位置づけている。確かに小学校の教科書よりは子どもにもわかりやすく、説明を詳しく書いてあるけれど、これだけで自学できる子どもは、相当に知能レベルの高い子どもじゃないかと思う。この教科書を子どもに渡して「じゃあ、がんばって勉強するように」なんてやっても、それだけじゃうまくはいかないだろう。


むしろ、親が一緒になって読んであげ、教えてあげるのには絶好の教材だ。ただし、問題点が一つある。それは練習問題が少ないことだ。『学ぼう算数』は基本的に例題→練習への流れで構成されているのだけれど、やはり問題数が少ない。例題、練習で基本的な要領をマスターしたら、やはり次の段階では問題を繰り返すことで、考え方が定着する。


寺子屋では、そこは市販の問題集を組み合わせて対処するしかなかったのだけれど、これがなかなか大変だ。というのは分数は4年生から、比に至っては5年生の分野だ。と思っていたら、同じ版元から準拠問題集が出版された。大喜びで手に入れたのだけれど、まだ不満が残る。残念ながら、これでもまだまだ問題数が足りないのだ。


とはいえ『学ぼう算数』は小学校の算数の教科書としては画期的、理想的である。もし、このブログを読んでくれている人の中に小学生の子どもをお持ちの方がいれば、ぜひ、お家でやらせてあげてください。オススメです。ただし、問題練習をたくさんやる工夫だけは忘れないように。



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