カラオケは成熟商品なのか


1994年5890万人→2005年4700万人


10年で1000万人、率にして20%も減ったのがカラオケ人口である(日経産業新聞11月10日)。ちなみに業務用カラオケのユーザー市場規模は、約7431億円になるらしい(全国カラオケ事業者協会→ http://www.japan-karaoke.com/05hakusyo/p4.html


日経産業新聞には、カラオケ人口の推移データと並べてシングルのミリオンセラー数が記されている。そして見出しが『カラオケ低迷でヒット曲減に?』とある。折れ線グラフの表を見ると確かにカラオケ人口の推移にやや遅れる形で、ミリオンセラー数も同じような増減具合を示している。


これは一応、共変関係があるといえそうだ。が、必ずしもカラオケ人口が減ったからヒット曲が減ったとはいえないのじゃないだろうか。つまりヒット曲が減ったからカラオケ人口も減ったとはいえないのかということだ。あるいは統計数字上はカラオケ人口とヒット曲に共変関係はみられるけれども、実際には隠れたもう一つの原因があることも考えられる。


カラオケは生活者の時間消費アイテムである。ということは、時間消費の選択肢が増えたために、相対的にカラオケへ行く機会が減っているとは考えられないだろうか。そう考えるなら94年と05年での大きな違いは二つ。インターネット(特にブロードバンド回線での)の普及と、携帯電話の普及だろう。


特に時間消費に注目するなら、ネットを見ている時間が増えているのは間違いないはず。そして一日は誰にとっても24時間しかないのだから、これまでなかった時間消費アイテム(=ネット視聴)が割り込んでくることで、弾き飛ばされるものが出てくるのは仕方のないところだ。もちろんそれはカラオケだけではなく、テレビを見る時間が減っている人もいれば、睡眠時間を削っている人だっているだろう。時間消費は完全にトレードオフゼロサムの世界である。


仮にカラオケに行っていた時間をネットに振り替えた人がいるなら、その人にとってはカラオケよりもネットの方がいいということになる。その「いい」理由はいろいろ考えられるが、とりあえずネットは一人で楽しめるけれども、カラオケは基本的に誰かと一緒に行ってくれる人が必要で、その調整を付けるのが面倒なのかもしれない。とすれば、これはこの10年間でのカラオケのメインユーザー層の何らかの変化を象徴している可能性もある。


あるいは可処分所得で考えてみた場合には、携帯電話代とカラオケ代がトレードオフになっている可能性はないのだろうか。これはティーンエイジャーにあてはまると思うのだけれど、彼ら・彼女たちが自由に使えるお金は小遣いプラスアルファだろう(アルファ分はバイトなどで稼いでいるお金ですね)。


それはそんなにふんだんにあるわけじゃない。限られたお金を、どう配分するか。女子高生たちは、そのあたりの感覚がかなりシビアだと何かの雑誌で読んだ記憶がある。それこそ1円単位まで損得勘定がはっきりしているそうだ。であるなら携帯電話にかかる費用とカラオケにかかる費用を比較して、小遣いの使い道を厳密に選んでいるのかもしれない。カラオケも携帯電話も、彼女たちにとってはコミュニケーションコストとして考えられるはずだ。であるなら、どちらがコストパフォーマンスが高いかは本能的に理解しているのかもしれない。


あるいは、もしかしたらヒット曲が減ってきていること、つまり歌いたい曲がないことがカラオケ衰退の理由なのかもしれない。とりあえず今年9月時点まででシングルがミリオンセラーとなったのはKAT-TUNの「Real Face」一曲だけ。それ以降も特に売れた曲は印象に残っていない。歌いたい曲があるからカラオケに行っていた人たちにとっては、そうした曲がへっていることがカラオケから足が遠ざかっている原因かもしれない。


では、カラオケはどうすれば生き残っていけるのだろうか。


やはり、あのクラスターの人たちを狙うのがとりあえずは手っ取り早いとは思うのだけれど、そのためには団塊向けに内装などを変えていく必要があるだろう。もちそん団塊向けとすることで、若者からは敬遠されるリスクはある。とはいえ、団塊層は比較的可処分所得があるわけだし、彼らには何より豊かな可処分時間がある。ここをどう取り込むか。


と考えれば、フィットネスクラブのライバルがカラオケということもありそうだ。であれば対フィットネスクラブを念頭に置いた差別化もありだろうし、逆もまた可成りかもしれない。いずれにしてもカラオケは業態転換の時期に差しかかっているんじゃないだろうか。


<追記>
とりあえずロードサイドのカラオケボックスは、飲酒取り締まりが厳しくなって軒並みアウトなんじゃないだろうか。カラオケ行って飲まないなんてねえ。逆に飲まずに歌など歌えるかってこともあるだろうし。と考えるなら、送迎サービスはすぐに思いつくとして、同じくロードサイドの飲食店も客が減って困っているはずなので、このあたりに何かアイデアがありそう。


一つには飲食を本気で充実させる案がある。カラオケ店内にきちんとして厨房を作って、料理人も入れてと。もちろん内装も替えて、飲食スペースを作ることも考えられるだろう。あるいは飲食店が近くに集積しているのなら、送迎サービスを共同でやる案もある。マイクロバスと運転手さんを雇って、巡回バスを共同運行する手もあると思う。



昨日のI/O

In:
『持続力/山本博
Out:

昨日の稽古:

・懸垂
・レッシュ式腹筋