元が円に取って代わるとき


世界第二位の経済大国は中国


すでに購買力平価でみれば、中国が日本を抜いているという話は以前からあった。が、今回は違う。GDPレベルでも中国が世界第二位になるという。少し考えてみれば当たり前の話なのだ。何しろ毎年平均して8%もの経済成長を遂げている国なのだから。


72の法則(というのが正式名称なのかどうか知らないが)がある。現在の金利をベースとしたときに、元本が倍になるまで何年かかるかを簡単に割り出すための法則である。やり方はとても簡単、72を現在の金利で割ればいい。今ではあり得ない話だが、筆者が子どもの頃の郵便貯金などはだいたい6%ぐらいの金利がついていた。


ということは72÷6=12。仮に子どもが生まれたときに、ポンと気前よく100万円貯金して寝かせておけば、その子が小学校を出るときには倍になっているというわけだ。最近の金利がどれぐらいかはまったく知らないけれど、仮に0.1%だとしたら倍になるのに720年(って何世代やねん!)もかかる。


話を戻すと中国の経済成長を毎年8%とすれば、だいたい9年もあればその経済規模は倍になるということではないか。日本が追い抜かれる日が来るのもむべなるかな。であれば、このほぼ確定した未来をどう考えるかが、経営者は問われることになる。


すなわち中国が世界第二位の経済大国になった時、世界情勢はどう変わるのか。


きざしはすでに見え始めているような気がする。一つ、絶対に見逃せないポイントは、米中関係の変化ではないだろうか。米中関係の変化は当然、日米、日中関係にダイレクトに影響を及ぼす。それだけではすまない。仮に米中が蜜月に入ったりすれば、ヨーロッパ、ロシアとのパワーバランスも根底から変わってくるはずだ。


かなり極端な見方をすれば、現実的にはすでに米中は、少なくとも経済面では完全な補完関係にあるとはいえないか。中国で作り、アメリカが買う。アメリカが支払った代金を元手に、中国が米国債を買い付ける。ただ一点、両国共通の問題は、いずれも化石資源がないこと。これだけは両国共に、どこかから買ってこなければならない。なので米中だけで完全に閉じた系を作ることは難しい。


しかし仮に何らかの手段で他国に依存する必要のないエネルギー源を手にすれば、さらに世界情勢は変わるだろう。何年後かはまだわからないにせよ、未来から振りかえってみれば、今年の6月に結構重要なターニングポイントとなるかもしれないイベントが起こっている。


そのイベントは、ガイトナー財務長官の訪中である。一説によれば土下座外交という話もあるらしいが、とにかくGM破綻によって起こりうる動揺(=米国債に対する不信感)を、米国は何としてでも抑えなければならない。そこで、現時点ですでに世界最大の米国債保有国であり、今後の伸びシロもある(かどうかは疑問符のつくところだが)中国にはひと言、絶対に噛んで含めておかなければならない。


だからガイトナー氏は、日本を軽くスルーして中国往復のジェットツアーを敢行した。


ここで考えるべきは、これまで米国はなぜ、日本を大切なパートナーとして扱ってくれたのか、だろう。リアルに考えれば、求めるがままに国債を買ってくれる(買わせることができる)相手であり、対中国関係を考えたときにも米国への最初の防波堤となる存在だから、ではなかったか。


ということは米中関係が根底から変化すれば、日本がパートナーとして求められる理由もまったく失われてしまう。とはいえ、すぐにアメリカが日本を見捨てることはないはずだ。何しろ日本にはまだ1400兆円とも言われる個人資産があるのだから。穿った見方をするならば、その個人資産にはぜひ米国債を買ってもらいたいはず。


すると、どこかで日米の政府間でコンフリクトが起こりはしないだろうか。日本政府は、国債の(恐らくは最悪時までを視野に入れた)引き受け手として、個人資産に望みをかけているはずだ。これこそが日本に残った最後の虎の子である。それを米国が表立って獲りにきたときに黙って差し出すだろうか。


そのとき、中国はどう出るだろうか。中国は中国で、きっちりと日本の生命線を抑えている。食料である。のど元過ぎればのたとえ話通り、すでに中国産食品がマスコミで取りざたされることはないけれど、飼料レベルまでさかのぼって考えれば、一体日本の食料自給率は本当のところ、どうなっているのか。それより何より食料の安全保障を考えたとき、食料の輸入先はどれぐらいのリスク分散がなされているのか。


仮に50%ぐらいを中国からの輸入に頼っているとすれば、それこそ生殺与奪の権を、すでに中国に差し出していることになるわけだ。その中国が晴れて、世界第二位の経済大国にまもなくなる。そのとき、何がどうなるのかをシミュレーションしておくことは、決して無駄ではないと思う。



昨日のI/O

In:
『日本文化における時間と空間』加藤周一
K社技術担当インタビュー
Out:
京都大学・手良向教授インタビュー原稿


昨日の稽古:富雄中学校武道場

・基本稽古、移動稽古、受けの稽古、組手稽古