値上げは税収に貢献するか



禁煙も減煙もしない人9.5%


チョコレートのロッテが実施したアンケート調査の結果である(→ http://www.lotte.co.jp/news/857.pdf)。1割の愛煙家は、今まで通りタバコを吸い続けるぞとおっしゃっているわけだ。その心意気や良し。何しろ今回の値上げは、半端じゃない。これまで300円だったセブンスターなんて440円になるのだ。ざっと1.5倍である。


それでも吸い続ける人が1割いる。では、残りの人はどうなのか。


今回の値上げ(というか正確には増税ですね)をキッカケに、禁煙しようと考えている人が27.6%いる。そりゃそうでしょう。仮に一日のお小遣いが1000円のお父さんがいたとする。お昼ご飯をコンビニ弁当の安いので済ませるとして、飲み物込みで450円といったところだろう。コーヒーはできるだけ安いところで飲むとして200円ぐらい。だからタバコを一箱買っても、ぎりぎりセーフである。


ところが、この1000円父ちゃん会計は、仮に買っていたタバコがセブンスターだったとすれば、増税でもろくも破綻する。弁当、コーヒーが従来通りだとすれば、毎日100円の赤字である。100円の赤字ということは、予算対比10%である。これだけの赤字を毎日垂れ流してしまうと、早晩、父ちゃん会計は破綻する。破綻すると何が困るかといって、お小遣い増額を望めないために、いずれお昼抜き、コーヒー抜き、タバコ抜きのいずれかを選択しなければならないのだ。


だからといってコーヒー抜きでのタバコは、ちっともうまくない。逆にタバコ吸わんとコーヒーだけ飲んでうまいかぁ〜、という話でもある。残された手段は、お昼ご飯のリストラしかない。かといって、今さらおかあちゃんに「頼むわ〜、ワイの分の弁当も作ったってや」と頼めるお父さんが、今どき一体どれぐらいいらっしゃるだろうか。


弁当作戦もダメ、となれば仕方がない。最後に頼るのはマクドの100円バーガーである。これならハンバーガー100円、コーラ150円、コーヒー200円、タバコ450円、締めて900円で収まる。お父ちゃんは最悪の経済破綻だけは避けられそうである。そんな思いまでして、タバコを吸い続けたい人が多い、わけがない。だから、禁煙する人がざっと28%、本数を減らす人が43%もいるのだ。


嫌煙派にとっては、げに喜ばしいことである。しかし、増税という本来の目的は、これで遂げられるのだろうか?


ごくごく荒っぽい試算をしてみると。仮にいま、タバコを吸っている人が100人いたとする。平均値として全員が一日セブンスターを一箱吸っているとする。一日あたりの売上は、300円×100(人)だから3万円である。


増税後、本数を3分の1に減らす人が約3%、半分に減らす人が8%である。値上げ後の価格が450円だから、本数を3分の1に減らす100人中3人の一日単位の売上は150円(3日で一箱と換算する)、半分に減らす人8人の売上は230円となる。


現在より減らす人の一日単位売上を300円とおいてみよう。まだ分からない20%の人たちは、一応、現在と同じだけ吸うものとする。すると一日あたりの売上は、次のようになる。


今まで通り吸う人:450円×30(人)=13500円
3分の1に減らす人:150円×3(人)=450円
半分に減らす人:230円×8(人)=1840円
現在より減らす人:300円×31(人)=9300円
トータルの売上は一日あたり25090円に減る。


だから増税すると減収になる、という単純な話ではない。現在吸っている人といっても、一箱で済む人がいれば、毎日1カートンぐらい吸う人もいる。だから上記の数字は、あくまでも試算に過ぎない。それにヘビースモーカーほど、禁煙も減煙もしない(というかできない)だろうから、トータルの売上は意外に減らないのかもしれない。


しかし、今回の増税が、国にとっては減収となり、同時にJTにとっては売上減となるリスクが大きいことは間違いないはず。だから国は増税といいつつ、本当の狙いは別のところにあるのかもしれない。その狙いは、JTをして増税反対の声を押し込めるほど強いものだったのかもしれない。



昨日のI/O

In:
『バイラルループ』アダム・ペネンバーグ
Out:
梅沢由香里氏インタビュー原稿

昨日の稽古:

指立て