日本も燃える恐れはあるのか


将来は可能性がある70%弱。今でも可能性がある10%強。


フランスであったような暴動が日本でも起こる可能性についてのネット
調査の結果だ(日経新聞11月21日号)。実に8割以上の人が、暴動
の可能性を考えていることになる。これをどう解釈すべきか。


フランスで暴動を起こしたのは移民系だといわれている。この「移民
系」という言葉にフランスの複雑な事情がにじみ出ている。つまり彼ら
は移民系でありながらも、国籍上はれっきとしたフランス国民なのだ。
「自由、平等、博愛」をもって建国されたフランスには、外国人問題な
ど存在しない。これが政府の公式的なスタンスだ。


だが、これが現実には強烈なダブルスタンダードとなる。本当の(とい
う言い方が正しいかどうかはおいておくとして)フランス人からすれば、
移民は移民である。国籍では同じフランス人だったとしても、意識の上
で移民たちを同胞として受け入れることはないだろう。


一方、移民たちは法律上はフランス人に強制的に組み込まれる。ここで、
自分たちの本来のアイデンティティとの隔離が起こることになる。しか
も組み込まれたはずのフランス社会では、おそらく徹底的な差別を受け
る。アイデンティティクライシスの上に加えられるさまざまな迫害が、
怨念のマグマへと変わり、それが吹き出したのが今回の暴動ではないだ
ろうか。


では、似たような構図が日本でも起こる可能性はあるのだろうか。


あると思う。日本には今のところ移民はいない。が、同じ日本人の中で
差別が起こっているのではないか。日経のネット調査では、暴動が起こ
る原因のトップ3として上がっていたのが次の項目だ。
1.経済的に恵まれない若者が増えている/約50%
2.職に就けない人が増えている/約48%
3.社会の階層化が進んでいる/約45%


増えている、進んでいるという表現からは、そうした傾向があることを
誰もが認めているのだろう。では、そうした傾向は今後、さらに進むの
だろうか。進むだろう。


なぜなら、日本の社会構造が大きく変わってきているからだ。その変化
をものすごく単純化すると、知識のあるものだけが経済的に裕福になれ
る社会へと変わってきている。逆にいうなら、普通にコツコツと働いて
いるだけで豊かになれることはまずあり得ない社会になりつつある。


では、知識のあるものはどうやって生まれてくるのか。経済的に恵まれ
た家庭に生まれ、しっかりとした教育を幼い頃から受けることによって
社会に登場してくる。このサイクルは時間をかけて固定されていく。と
なると、経済的にゆとりのない家庭に生まれると、それだけで最初から
大きなハンディを背負うことになる。


本来なら、そのハンディは公教育を受けている期間中に一度は解消され
る。が、いまの公教育にその役割を期待することはむずかしい。さらに
いえば少なくとも中学校からは、経済的にゆとりのある家庭では公立よ
りも私立を選択する可能性が高い。


なぜなら公立では、問題児がいた場合、他の子どもたちに犠牲を強いて
でもその子を受け入れなければならない。しかし私立では問題児に辞め
てもらう選択肢がある。子どもにしっかりとした教育をと考える親が、
どちらを選ぶかは自明のことだろう。さらにいえば、優れた教師が自分
の職場としてどちらを選ぶかもいうまでもないだろう。


そうなると、おそらく中学に進んだ時点で将来の可能性のすべてとはい
わないまでも、かなりの部分が決まってしまうことになる。ということ
は早くも中学時代から社会的に暗黙の差別化に置かれる人たちが増える
ことになる。そこにマグマがたまる。


こうした状況を防ぐカギは家庭教育にある。繰り返し書いてきたことだ
けれど、子どもにきちんと物事を考える習慣を親が付けてあげること。
これに尽きる。そして、それは決して難しいことでもなんでもない。子
どもに視線を合わせて(具体的にはしゃがんであげることが一番だ)、
子どもの気持ちを考えて、いろいろと質問しながら話を聞いてあげるこ
と。ここがスタートだ。



昨日のI/O

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『闘魂パンテオン今野敏
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