YouTubeは第二のGoogleになるか


一日のアップ画像6万5千本


約1.5秒に一本の割合で動画がアップされている。YouTubeヨウツベなどという言い方もある)である。もちろん増えているのは投稿ビデオの数だけではなく、一日の閲覧数も1億本を超えたらしい(シリコンバレーからの手紙120・梅田望夫/『Foresight』9月号)。


YouTubeについてのエントリーはこれで5回目になる。これ、めちゃくちゃ気になる。何が気になるのかといえば、Googleの最初の頃と似ている点が気になるのだ。


Googleが、検索サイトとしておもしろいらしい」。そんな話を最初に聞いたのは、5、6年ぐらい前のことだろうか。とりあえず書き物や企画仕事をしている人間としては、ネット上にいろんな資料があることは画期的な出来事だった。それまでなら図書館へ行ったり大きな本屋で本を探して買って調べなければわからなかったことが、ネット検索『でも』わかるようになってきたのだ。これは資料収集時間を大幅にカットしてくれた。


そんな便利なインターネットでの資料探しには、検索サイトが不可欠である。最初はYahoo!からスタートしたのだが、ディレクトリ型検索では、こちらのキーワード(わりと特殊である)に対するヒット数が少ない。だから、いろいろと使い比べてみて最終的にgooに落ち着き始めた頃、Googleが登場した。


初めてGoogleを見た時は、たぶんまだベータ版だったはずだ。とりあえず究極のシンプルさというか、トップページデザインはキーワードを入力する窓とGoogleのロゴだけ、みたいなインターフェイスが気に入った。当時はまだISDN接続の時代である。gooも悪くはないのだけれど、とにかくトップページが表示されるまでに時間がかかる。これに対してGoogleはトップページのデータ量が極めて少ないから一瞬で表示される。


さらに使ってみて驚いたのは、こちらが探しているデータにぶつかる率が高いことと速いこと。「とは」検索のヒット率などは抜群だった。「とは」検索が何かというと、つまり調べたいキーワードに「とは」を付けて検索するやり方だ。特に公的なデータなどを調べる時には、この「とは」検索+acとかgovで絞り込みをかけると、求めるデータをゲットできる率がかなり高かった。


ちょっと話がそれたけれど、このGoogle登場時に受けた感じが、いまのYouTubeから受ける印象と似ているのだ。


とりあえず知的にワクワクさせてくれて、広告ゼロ。Google並みとは行かないけれど(YouTubeには日本から異常にアクセスが集中するときがあって、このときはやたら回線が重くなる)動画にしてはサクサク見れる。これである。


そのコンテンツはといえば、Googleがインターネット上のすべてを網羅しようとしているのに対して、YouTubeは投稿されたものだけ。ここに大きな違いがあるのだが、もう一歩引いて眺めてみると、コンテンツを自社では作っていない点は同じだ。これはインターネットで成功するビジネスに共通するモデルである。


インターネットがある以上、コンテンツはみんながよってたかって勝手に作ってくれる。そこで成立するビジネスは、そのコンテンツをみんながより使いやすくするシステムをベースとしたものだ。たとえばeBayも楽天GoogleYahoo!mixiAmazon(ちょっと違うけれど)、みんなそうだ。


これらとまったく同じトレンド上で登場したのがYouTubeだと思う。そのユーザー数が爆発的に伸びている。その背景としてはシンプルな、つまり考え抜かれた結果到達したインターフェイスやシステムが貢献しているのだと思う。さらに今や動画投稿といえば『YouTube』という意識が、ネットユーザーに刷り込まれてしまっている。これが何より強い。


仮に今から『YouTube』とまったく同じことを、たとえばマイクロソフトがやったとしても、YouTubeを抜くことは絶対にできないだろう。そういったポジションをすでにYouTubeは確保している。Googleが検索サイトとしていつの間にか確固としたポジションを得ていたように。


さらにGoogle初期と似ているのが、未だにまったく利益を出していないこと。利益どころか売上さえほとんどないだろう。Googleだって、ずっと売上はほとんどゼロで来ていたのだ。ここ最近でこそ、広告売上が恐ろしい勢いで伸びているけれど、それはまったく新しい広告モデルを開発した結果である。


このGoogleの前例もYouTubeの可能性を何か示唆しているような気がする。つまりGoogleが新しい広告モデルを開発したように、YouTubeももしかしたら、まったく新しい広告モデルを開発しているのではないだろうか、ということだ。


すでにテレビCMが衰退に入りつつあることは明らかになってきている。そしてYouTubeが扱っているのは、構造的にはテレビCMと同じ動画だ。ここがヒントである。


スポンサーにとっては、テレビCMそのものに価値があるわけではない。価値は、自社のメッセージをどれだけ的確に多くのターゲットに伝えられるか。この一点にしかない。そのためのメディアがこれまでのところ、テレビCMしかなかっただけの話だ。


そこに殴り込みをかけようとしているのがYouTubeである。ユーザーがキーワード検索をかけると、それに引っ掛かったビデオが表示される。このモデルの恐ろしさにテレビ業界や広告業界は気がついているんだろうか。あるいは広告メディアとしてのYouTubeの効率性の高さに、スポンサーはいつ気がつくのだろうか。というかYouTubeがそうした営業活動をスタートするのはいつなんだろうか。


それが始まったとき、テレビ、広告といったこれまでの世の中で重要なポジションを占めてきた産業が、根底から崩れていくような気さえする。




昨日のI/O

In:
大山倍達正伝』
Out:


昨日の稽古:西部生涯スポーツセンター・2F軽運動室

・基本稽古
・ミット稽古(正確に的を狙う)
・コンビネーション組み手


昨日のBGM