東京ホテル戦争
一泊5万円
そんな高いホテル代、一体誰が出すねんと思うのだが、さて。東京で今年、世界的に有名な超高級ホテルがオープンする。ザ・リッツ・カールトン東京とザ・ペニンシュラ東京、いずれもスタンダードタイプの室料が5万円以上もするとびっきりのラグジュアリーホテルだ。
ここ数年、東京では高級ホテルが相次いでオープンしてきた。マンダリン・オリエンタルに、グランドハイアット、コンラッドにストリングスと海外の有名どころがほとんど出そろった感がある。そこにさらに突っ込んできたのがリッツとペニンシュラというわけだ。
これでは過当競争に陥ると考えるのが当然だろう。だから東京では今年、団塊問題とは異なる2007年問題が起こるといわれている。これら超高級ホテル間の戦争である。
もちろん東京は日本の首都である。経済にかげりが見えるとはいえとりあえずGDP世界第二位(購買力平価換算ではすでに中国に抜かれているという話もあるが)の大国である。株式交換を使った三角合併解禁ともなれば、外資系金融機関がひっきりなしに日本のお買い得企業を買収しにくるだろう。海外のエグゼクティブがどんどん来日する可能性は高い。
なるほど、これら超高級ホテルは、そうした海外からのエグゼクティブもターゲットとしているのだろう。が、それだけで採算が成り立つはずがない。日本国内からの集客も目論んでいるに違いない。と考えた時に、何かとてつもなく現実離れした感覚に襲われるのは私がセレブ(最近の子どもたちは「カネモ」というらしいが)ではないからだろうか。
しかしである。まともな感覚なら一泊5万円は、どう考えても高過ぎはしないか。経費で落とすにしても、これだけの額を認められるのはせいぜい上場企業の社長、会長クラスか。とはいえビル・ゲイツなどは来日時に気を回して高級ホテルを取ったりしたらもったいないと怒りだしたという逸話もある。経費にシビアな時代にいくら社用とはいえここまでの高級ホテルに泊まることはなかなか許されないだろう。
ここで少しみみっちい話でになるが、仮に夕方5時にチェックインして、翌朝10時にチェックアウトするとしよう。これだと滞在時間にして17時間である。時間単価にしてホテル代は約3000円にもなる。
いかがですか? 高いとは思いませんか。これが地方都市、たとえば昨年末から仕事でよく行くようになった岐阜あたりだと駅前最新ホテルの超デラックスルームでもせいぜい1万円である。これだと滞在時間を同じ17時間とするなら時間単価はたったの600円弱に過ぎない。
もちろんこの手のホテルに超高級ホテルが備えているようなフィットネスクラブやプールなどはない。設備に関しては、まったくもって質素である。しかし客室の居心地に宿泊費と同じ5倍の差があるかといえば、そんなことはあり得ない。
そりゃ内装への金のかけ方は違うのだろうが、寝てしまえば関係ないし。それに今どき1万円のホテルだって寝心地はすこぶるよい。ベッドもきちんと硬い(誤解のないように言っておくと、一流ホテルのベッドほど、しっかりした剛性感があり、体をきっちり支えてくれる。いわゆるふかふか・ふわふわのベッドなど腰が窪みすぎて眠りにくいものだ)。
こんなケチ臭いことをいちいち気にしない人が、ポンと5万円払って泊まるのだろうなあ、きっと。でも、ここで堂々巡りになるのかもしれないが、そんなに気前良くお金を出せる人が、本当にどれだけいるのだろうか。一晩5万円も出せるって月収どれぐらいの人なんだろう(というかむしろ月収なんか関係ない人たちなのかも知れませんね、実のところは)。
もちろん、これこそ余計なお世話で各ホテル共にそれなりのマーケティングリサーチもきちんとした上で、間違いなく採算が合うと判断したからこその東京進出なのであろう。日本には富裕層が増えているって話もあることだし。
東京ホテル戦争の行方は、実に興味深いところだ。
ちなみに個人的に、こうした高級系ホテルで唯一泊まったことがあるのはラディソン都ホテル(高輪や赤坂のプリンスホテルも入るのなら、それらも含む)。白金台にあるジムもプールも完備した超一級のホテルである。幸いにもここには社員割引価格で泊まることができるので、ちょくちょく利用させてもらった。
その体験からいえば、確かに部屋に入った瞬間の空気感のようなものが違うことはわかる。圧迫感がなくごく普通にくつろげる。お金をかけるとこうしたスペース創りができるのだろう。これぐらいの空間をいつも社員割引ぐらいの価格で利用できるなら、まったく申し分ない。ただまともにプロパーの価格を支払ってまでとなると、さんざん悩んだ末にやっぱり別のホテルにするだろうな。
昨日のI/O
In:
名古屋某社取材
Out:
某社・インタビュー原稿フィニッシュ