百貨店の復活


数ヶ月に一回以下が6割


百貨店に行く人が減っている。

百貨店に「まったく行っていない」か「数ヶ月に一回程度」しか行かない人が計59%と約六割を占めた。週に一回以上足を運ぶ人は一割しかいない
日本経済新聞3月5日)


確かに子どもの頃(約四十年前)は、日曜日デパートに連れて行ってもらうのがいちばんの楽しみだった。街中まで電車に乗って出かけていき、デパート独特の華やいだ雰囲気に浸る。子ども心にも何となくうきうきと気分が昂揚する。何回かに一回は欲しかったオモチャを買ってもらい、食堂でお昼ご飯を食べる。


そのあとは屋上で遊ばせてもらった。といってもその頃は今のようなゲーム機などはなくて、ちょっとした乗り物にのるぐらいだったけれども、親が自分のためにお金を使ってくれることが何となくうれしかった。同じような家族連れで日曜日のデパートはいつも混んでいた。食堂なんかでもたいていは並んで待たなければならないぐらいだった


今では考えられない風景だと思うけれど、あの頃デパートはとりあえず特別な場所だったのだ。


長じてコピーライターの端くれみたいなものになったころには、やはりデパートが憧れの的であった。「不思議、大好き」とか「おいしい生活」といったキャッチコピーが一本で一千万円といわれた時代である。コピーライターなら西武の仕事が一等賞、みたいなイメージがあった。地方百貨店でもいいからデパートの広告をしたいと思っていた。バブル前期の景気が良かった頃の話だ。


この頃はまだデパートが、新しいムーブメントの発信地的な役割を、まだ微かに果たしていた最後の時期なのかもしれない。その後、今から十年ぐらい前には百貨店淘汰の時代といわれだし、この先十年で残れるところは少なくて三つ、多くても五つぐらいだろうなどと予測された。


そして今やデパートといえば、なんだか没落貴族のようなイメージが付きまとう場所に落ちぶれている。以前、大阪に住んでいたときは近くの松坂屋によく行った。何が良いかといえば、とにかく空いているのが気分良いのだ。平日の昼下がりに行ったりすると、少々大げさな言い方かもしれないが、ワンフロアにいるお客さんより店員さんの方が多いぐらいである。


この松坂屋には大きな本屋さんとCDショップがあり、最上階の喫茶店はなかなか眺めがよかったりもした。だから天満橋松坂屋はけっこう気に入っていたのだけれど、こんな気に入られ方をしているデパートが営業的に持つはずもなく、あえなくなくなってしまった。


実質的な買い物の場として、デパートが機能していた時代は確かにあったのだろう。百貨店といわれるぐらいで、たしかに百貨が揃っていて、そのことに価値があった時代。たぶん今から四十年ぐらい前は、デパートでしか手に入らないものがたくさんあったのではないか。


しかし、今やデパートにあるものはいずれも中途半端に映る。たとえば文具関係など手帳にしても、ちょっと凝ったノートにしても、あるいは筆記具などでも欲しいものがない。それらは、たとえば東急ハンズのような店に行った方がよほど種類が揃っている。


ではファッションはどうか。ファッションなどと偉そうに語るのもおこがましいが、それでもデパートで服を買いたいとは思わない。スーツなどを手に入れる場所としては悪くはないのだろうが、でもそうした服を買うためにデパートに行くことはまずない。


ということはデパートはもはや、完全にその役割を終えた業態なのだろうか。決してそんなことはないと思う。むしり、これからデパートの復活が始まるんじゃないだろうか。つまりSTPを徹底的に見直すことで、以前のような規模は望むべくはないとしても復活は可能だろう。では、そのSTPはどうなるか。


セグメントはまず、高齢/団塊世代の生活サポートである。衣食住遊学に医まで揃えてもいいだろう。とにかく彼らの可処分時間&資産に的を絞る。ターゲットは当然、この世代となるが、それも郊外からわざわざ足を運んでもらうことは期待できない。最近増えている都心回帰派の団塊カップルを狙う。ポジショニングは従来通りでよいと思う。すなわち、ちょっと高級、だからていねいで親切で気が利いている、といったポジション。


これはコンビニが最近始めている「ご用聞き」的な宅配サービスとは、ワンランク次元の違ったポジションである。そして彼ら世代が必要な品はきっちり揃え、加えて孫への贈り物に最適なものを揃えておく。何なら巡回バスでも出して、商圏内の主要マンションを回るぐらいのサービスをしてもいいだろう。もちろんお買い上げ品はその日のうちにお届けする。


問題は果たしてこれで、採算が合うかどうか。案外、お金持ちの団塊層だけを相手にしていても採算は取れそうな気がするのだけれど。



昨日のI/O

In:
『獄中記/佐藤優
Out:

昨日の稽古:富雄中学校体育館

・コーディネーション縄跳び
・基本稽古
・型稽古(太極一・足技太極一)
・ミット稽古
・組み手稽古