携帯ブログの問題点


月平均34通

10代女性が送るデコメール、通称デコメの数である(日経産業新聞6月21日)。依然として若い人たちはケータイが大好きなようで、遂にケータイだけで使えるブログやSNSサービスが出始めた。たとえばマイネット・ジャパンが昨日からサービスインした「デコブロ」。これはケータイだけで完結するブログサービスである。すなわちケータイさえあれば申込みはもとより記事を書き、読むことまでできる。パソコンにノータッチで使えるとっても便利なサービスだ。


しかし、あまりにケータイだけにはまってしまうと、恐ろしい結末を招くのではないかと、おじさんは心配するのである。


ケータイが音声通話のためのツールから、テキストをメインとしたデータ通信のためのツールとなって久しい。特に若い人たちにとっては、この傾向が強い。今どきケータイ使ってでっかい声で話してる人がいるとすれば(新幹線の中などたまにいらっしゃいますが)、それはたいていオッサンである


一ヶ月以上前にTwitter人気を危惧するエントリーを書いた(→ http://d.hatena.ne.jp/atutake/20070510/1178788461)。短文(単文)のやり取りだけを刹那的に繰り返していると、コミュンケーション能力が落ちやしないかと老婆心ながら心配だ、といった内容だ。これと同じ危うさをケータイブログに対しても感じずにはいられない。


というよりも、すでにコミュニケーション能力が低下して人たちが増えていて、その人たちにフィットしたサービスとしてケータイブログやケータイSNSが登場しているということなのかもしれない。


人の行動が他人にどのように影響を及ぼすかを考察したメラビアンの法則によれば、影響が大きいものからビジュアル情報、音声情報、言語情報となる。その割合はといえば、それぞれ55%、38%、7%。早い話がパッと見の印象で半分ぐらい、声の質や大きさ、話し方などで残りの4割ぐらいが決まり、具体的に相手が語っている内容は、実は一割も影響していない(らしい)。


メラビアンの法則が完全に正しいかどうかはともかくとして、対面者が得る情報量に着目して考えれば、この順位は少なくとも当たっていると思う。つまり人間は視覚から得る情報量が圧倒的に多く、次が聴覚、そして最後が言語(意味)情報だということだ。


であるなら、それぞれの情報を処理するのに要求される能力はどうなるか。


誰かと対面している時がもっとも多くの情報をもっとも高速に処理する能力が求められるはずだ。次がたとえば電話で会話する時などであり、単にテキストを読むだけなら、求められる情報処理能力もうんと低くていい。もちろんテキストを読むといっても、行間や背景までを読むとなるとそう簡単なことではない。簡単ではないが、とりあえず目の前にテキストだけが提示された場合は、その解釈はほぼ100%読み手に委ねられている。どう読んでも構わないわけだ。


これが目の前に相手がいて、その人の身振り、仕草から表情の変化までをきちんと捉えてその意味を読取り、さらに相手の口調に対して感度鋭く聴覚アンテナを立て、その言葉の意味までを正確に理解したうえで的確に反応しようと思えば、それはなかなか大変な作業となる。


すなわち対面でのコミュニケーションはおそらく、大げさにいうなら全身全霊を傾けないことには、ことばの本来の意味での「コミュニケーション」は難しいのだ。逆に考えれば、そうやって身全霊を傾ければ、たとえ言葉の通じない異国の人とでも交流は可能だということである。


ということはケータイのミニブログによるコミュニケーションなどで要求されるコミュニケーションスキルはもっとも少なくて良い、ということになりはしないか。


図式的に書くなら、伝わる情報量は
対面>音声通話>ミニブログ の順で対数曲線的に減って行く。
ということは、必要とされる情報処理能力も
対面>音声通話>ミニブログ の順でやはり対数曲線的に減っていくであろう。


とすると、ミニブログ、ケータイブログ、あるいはケータイメールだけでコミュニケーションを繰り返している人たちの情報処理能力は著しく落ちていきはしないか。これをおじさんは危惧するのである。


最近よく「空気、読め」といわれる。こんな言葉が盛んに使われるということ自体が「空気、読めない」人が増えている証であろう。なぜ、空気を読めない人が増えているのか。恐らくは情報処理能力が劣化しているからだろう。


というようなことを考えるおじさんとしては、ケータイブログの普及による若い人たちのより一層のコミュニケーション能力低下が、杞憂に終わることを祈るばかりだ。


昨日のI/O

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・レッシュ式腹筋