Curvesが強いわけ
店舗数607、会員数16万人
カーブスジャパンである。「フィットネスクラブ」シリーズのエントリーもこれで12回目となるが、過去に3回カーブスを取り上げてきた。
「30分フィットネスは成功するか」http://d.hatena.ne.jp/atutake/20060817/1155765261
「Curvesの急成長と時間価値の問題」http://d.hatena.ne.jp/atutake/20060817/1155765261
「Curvesの価値」http://d.hatena.ne.jp/atutake/20070427/1177643912
1年ほど前のエントリーでは、カーブスの店舗数は260カ所で会員数は5万人となっている。つまり一年ちょっとで店舗数は倍以上となり、会員は3倍にまで増えた。単純に考えればフィットネス業界にはとんでもないことが起こっていることになるはずだが、カーブスが多店舗展開したためにどこか大手が倒産したという話は聞かない。これはとても不思議である。
ということはカーブスは、従来のフィットネスマーケットの中で既存のクラブからシェアを奪ったのではなく(実際には少なからず奪っていると思うけれど)、どちらかといえば新しいマーケットを開拓した、のではないか。大いにあり得る話だと思う。
日本でこれほどまでに急成長した理由を同社CEOが答えている。
女性をジムから遠ざけてきた鏡、男性、化粧という三つの障害を取り除いた。男性の視線を受けず、化粧なしで自分の姿を気にせず運動できるようにした。時間のない女性が利用できるよう三十分でこなせる短時間トレーニング法も提案した。住宅地など通いやすい場所への立地も支持を集めた一因だろう。
(日経産業新聞2007年12月21日付け26面)
このインタビューは、ちょっと要注意である。なぜなら、これまでカーブスの成功要因は、何よりもまず30分フィットネスあると考えられてきたけれども、彼らが最優先していたポイントは違うところにあり、それが女性たちの潜在ニーズにフィットしたことがわかるからだ。
つまり女性が求めていたのは「男性の視線を受けず、化粧なしで自分の姿を気にせず運動できる」ことだったのだ。ということは、従来のフィットネスクラブは、こと女性の(それもおそらくは20代後半から40代ぐらいまでの年齢層の方々について)かなり根源的な誤りを犯していたことになる。
どういうことかといえば、フィットネスクラブはトレーニングをする場所でありながら、自分の姿を自分を含めて他人に見てもらう場、としてもデザインされていたことが誤りだったというわけだ。その証拠にスタジオと呼ばれるエアロビクスなどを行なうスペースは必ず鏡張りとなっている。大義名分は自分の動作が間違っていないかをチェックするためとされているが、実は鏡に映る自分の姿を見たい「ややナル」ちゃん(ナルシストのことですね)のための装置である。
ジムまた然り。ここはどちらかといえば男性のためではあるが、やはり自分の筋肉を見るための鏡がある。これがうざかったのだ、多くの女性にとっては。ところが従来型のフィットネスクラブを企画してきたのは、やはりフィットネス系の人たち、すなわち「ややナル」からもしかしたら「かなナル(かなりナルちゃん)」な人たちである可能性が高い。彼らには女性の本当の気持ちがわからなかったのではないか。
誤解を恐れずに言えば、特に子どもを抱えている女性たちは徹底してリアリストである。自分の姿を見てうっとりするよりは、正直にうっとおしいと思う人が圧倒的多数派であろう。そんな人たちにとってこれまでのフィットネスクラブは、運動したいニーズこそ抱えているものの、決して進んでいきたい場所ではなかったはずだ。
さらにである。男女混合のフィットネスクラブへ行けば、自分のどちらかといえば少し崩れ始めた体形を男性の目にさらすリスクまで抱えることになる。確かに以前私自身がクラブに通っていたときは、昼間のおばさまタイムに行くことが多かったこともあって、ジムでは視線の持っていき場所に困るようなこともあった。こっちも困ったけれど、おばさまたちだって相当にヤだったはずだ。
そこに救世主の如く登場したのがカーブスだったということではないのだろうか。だからカーブスはフィットネスマーケットにおいてはもうあり得ないと考えられていたブルーオーシャンを切り拓くことができた。
今後カーブスでは出店ペースを上げて5年以内に最高で3000店を新規開業する予定だという。獲得会員目標は成人女性の3%、数にして160万人である。カーブスが今後、ターゲット層を拡張するのかどうかは注目すべきポイントだと思う。
そして同社の強さはインタビューの最後にCEOが述べたコメントからもうかがえる。
目標は世界のマクドナルドの店舗数を上回ること。米国から『脂肪』ではなく『健康』を輸出することが我々の使命だと考えている
(前掲紙)
確固としたミッションを持つ企業は強いと思う。
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