四十歳からの空手4・殴れっと言われても

atutake2008-06-28



「いいっすよ。思いっきり来てください」


たぶん入門して一ヶ月ぐらい経った頃の稽古で、支部長から「そろそろ組手やってみましょうか」と声をかけられた。組手というのは、ボクシングでいうところのスパーリングである。すなわち空手の攻防を相手と実際にやり合うわけだ。


前々回に書いたように、空研塾はフルコンタクトである。だから組手といえば、突きや蹴りを実際に相手に当てるのである。当てられると、当然痛いはずである。痛いことはあまり経験がないのである。というか、これまでは痛いことを避けて生きてきたのだ。生まれてこのかた40年、殴り合いのケンカなどたったの一度もすることなく平和に過ごしてきたのだが、いよいよど突き合いをしなければならない羽目になった。


これはプレッシャーであった。


というか、心底びびった。もちろん、その頃には道場におられる先輩方とも少しは話をできるようになり、皆さんがとてつもなくおっかない人ではない、ということだけはわかっていた。そりゃ体は厳ついし、基本稽古など見ていると「あんな蹴りをぶつけられたら、死ぬやろうなあ」としか思えなかったりするのだけれど、話してみると意外に普通の人だったりする。当たり前である。


空手をやっている人、みんながみんな、恐ろしい人というのは、明らかな偏見である。実際支部長などは、すごくやさしげな眼差しをされているのだ。塾長だって稽古の時はおっかないけれど、稽古が終わった後はとてもニコニコされている。


さて、組手である。


忘れもしないが、人生初の組手の相手をしてくださったのは、他流派で黒帯をとった後、空研塾に来られた方だった。空研塾では審査を受けていないから黒帯を取られていないだけで、実力はバリバリである。もちろん初心者をいじめるような方ではない。そこで出たのが冒頭のことばである。


一応ガードはされているが、こちらが突いても(めっちゃおっかなびっくりで)、あるいは蹴っても(めっちゃへっぴり腰で)、受けるどころか体を動かすことさえない。相手をしていて、こちらが明らかに恐々やっているのがわかったのだろう、だから「思いっきりどうぞ」と声をかけてくださったのだ。


しかし、である。人のお腹は固いのである。あるいは腕もごつくなると硬いのである。足の太ももだって鍛えると堅くなるのである。知らなかった。


もちろん恐る恐るではるが、自分としては精一杯の突きを出してみた。拳が痛かった。覚えたてのローキックを蹴ってみた。明らかに、自分のすねがじ〜んとしびれた。先輩がやっておられたのはたぶん、こちらの攻めが当たる瞬間だけ、当たる場所に力を入れるという防御法だ。すなわち固く締まった腹筋や太ももを、やわな拳や足で、自分なりとはいえ力いっぱい突いたり蹴ったりするとどうなるか。


こっちが傷つくのである。傷つくといっても、こちらはそもそも非力なのだから自分の骨が折れたりするようなことにはならない。が、はっきり言って「痛い」。まず皮膚の表面が痛くて、さらにはその下の肉が痛くて、おまけにもっと中にある骨まで痛い。だから、いくら「思いっきりきてください」といわれても、それは無理、ということがよくわかった。


この間、先輩はいわゆるサンドバッグ状態になってくださっている。もちろん攻めてくることはまったくなく、手を使っての受けさえされない。それっとばかりに一生懸命攻めて、相手が何もしていないのに自分はしっかり打撲傷になる。フルコンタクト空手とは、実に恐ろしいものだったのだ。


家に帰り、風呂上がりに足を見てみると、なんと痣だらけである。改めて、ほんとにえらいことを始めてしまったもんだと思った。




昨日のI/O

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昨日の稽古:

・懸垂/腹筋