優しいキーボード
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今年に入って、これまでに書いてきた文字数である。ここ最近は更新頻度が落ちているけれどもこのブログと、ほかにメルマガと取材テープ起こしと取材記事と企画書の原稿とコピーに、読書メモなどを全部ひっくるめるとこれぐらいになる。
なんで、こんな馬鹿げた記録をつけているかといえば、以前読んだ梅田望夫さんのブログに刺激を受けたからだ。
「この間数えてみたら、10年連続10万行、プログラムを書いていたことになるんですよ。あと何年くらい続けられるかなぁ」
前回会ったときに印象に残った彼の言葉がこれだった。同席していた若いハッカーが「年に10万行って一日平均250から300行か。土日もなしで毎日書いて・・・」
<中略>
そんな彼に「ねぇ、こいつは凄いなぁ、こいつにはかなわないなぁ、と思ったプログラマーって居る?」と聞いたことがある。誰とは言わなかったけれど、一人だけいる、と石黒は言った。
「その人は何が凄いの?」
「いや、コード見てわかるんですよ。書いている奴が、食事しているときと寝ているとき以外は、ずーっとプログラム書くか勉強しているかのどっちかだってことが、コード見てわかるんですよ。それも十年以上、そういう生活をしているのが、わかるもん。すげーなぁと思いますよ。そいつ一人だけですよ。」
(→ http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20060930)
もとよりプログラムを書くことと、このブログのような駄文を書き流すことを同列で考えているわけではない。ただ、できる限り毎日書くこと、それも可能ならば毎日1万字書くことを自分に課せば、何かが変わるかもしれないと思ったのだ。もう少し正直に言うなら、何とかして少しでも「変える」ことが必要だと考えていた。そうやって書き続けることで少しは文章がうまくなることを願いもした。
結果的には少なくとも書く時間を毎日確保しようと意識したおかげで、生活が少し変わった。書くネタを探そうと心がけたからだろう、物事に対する見方も変化した。それは良いのだけれど、とうとう腱鞘炎になったようだ。原因ははっきりしている。キーボードの打ち過ぎだ。
メインで使っているキーボードはiMacに標準でついていたもの、ちょっと変わったキーボードである。とはいえ特に打ちにくいわけではなく、打ち心地もまずまずといったところ。ただ、キーストロークが浅いので、少し力を入れると叩いた指の力がそのまま指に跳ね返ってくるような構造になっている(という気がしているだけなのかもしれないが、いわゆるパンタグラフ式のキーボードとは明らかに異なる)。
このiMacキーボードがイマイチなのだ。だから原稿を書くだけの仕事の場合は、iBookを使うようにしている。これも好みによってはあまり快適とはいえない打鍵感なのかもしれないが、自分には合っている。12インチノートパソコンならではのこじんまりとしたサイズも、いささか指が短めな私にはちょうどよい。
空手をやっているので拳立てや指立てをして、前腕から指は鍛えているつもりだ。だからまさか自分が、キーボードの叩き過ぎで腱鞘炎を起こすなどとは夢にも思っていなかったのだが、しかし。
ここ何日か、左手の肘から少しばかり手のひらの方によった部分の筋肉がパンパンに張っているなあとは思っていた。少しぐらいもみほぐしたところで、凝りはちっともほぐれない。まるで自分とはまったく無関係に頑固な意思が、左腕の前腕部に居座ったかのような感じだった。といっても特に激しく稽古したわけではないし、筋トレをやった覚えもない。ちょっとがんばって原稿を書いていたぐらいなのだが、どうやらそれがいけなかったようだ。
パソコンを使うときは、Macであるにもかかわらずできるだけマウスを使わないようにしている。iBookにマウスをつなぐことは皆無で、iMacを使っているときもできるならテンキーさえ使いたくない。いわゆるホームポジションにこだわっているわけだ。なぜなら、その方が少しでも効率的に文字を打てるから。
ということはカーソルの移動、文字の消去などをできる限りcontrolキーを使ったショートカットでこなすことになる。すなわち左手の小指を酷使することになる。加えて、最近原稿を書くためのソフト「Scrivner」を導入した。これが資料を広げておきながら、原稿を書いたり、あるいは章ごとに文章を入れ替えてみたりといったことが自由にできる優れものソフトで、いってみればエディター、アウトラインプロセッサーにスクラップブックまでを合体させたような使い勝手である。
ただ、このソフトをキーボードショートカットで使い倒そうとすると、option、shift、controlキーを組み合わせることが多く、すなわち左手の小指、薬指、中指あたりをさらに駆使することになる。そんなことを続けているうちに、とうとう左手が白旗を揚げるに到ったようだ。
そして、痛めてみて初めて、文字を自由に打てないことに不便さに気づいた。さらに原稿を書く仕事を今さら、手書きには絶対に戻せないことも身にしみてわかった。ということで、もっと手に優しいキーボードを使うのか、あるいはキーボードだけにこだわらずにマウスをもっと活用すべきなのか、さらにはローマ字入力方式をやめるべきなのか、とても悩んでいる。
究極の選択肢としては、原稿用紙に万年筆でさらさらと文字を書いて「はい、できたよ!」なんて感じで、待ち受けている編集者に渡してお金をちょうだいする仕事もあるが、それは選択肢としてあり得るというだけなわけで。とりあえず現状を何とかせんといかん。
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