網様体を鍛えろ


一日3時間で10年間


単純計算すると10,950時間、ざっと1万時間である。昨夜のNHKテレビ『追跡!AtoZ』で「天才羽生の源とは?」といった特集をやっていた。川島隆太先生に話を聞いて以来、やたらと脳に興味があるのだ。おまけについ最近、ロボット博士石黒阪大教授から聞いた話にもすごく刺激されていて、脳科学はちょっとしたマイブームである。


そこで、ほろ酔い気分でうつらうつらしながらテレビを見ていたら、「一日3時間、集中する」といったフリップが出てきた。何のことかといえば、一流棋士たちにアンケート調査をした結果浮かび上がってきた共通点がこれだという。


寝ぼけ頭でぼやっと計算してみて驚いた。これって最近話題になっている(なってない?)1万時間説に当てはまるじゃないですか。人間の頭はもしかしたら、このように一定期間集中して一つのテーマに絞り込んで使うことで、飛躍的に能力を高めることができるのかもしれないと思った。


将棋の世界で考えるなら、これで一応プロになれる。つまり、その能力で食っていけるレベルになるわけだ。ただし、問題はその先である。


テレビのテーマは、並み入り一流棋士たちの中でも断トツにすごい羽生さんは、どこが違うのか。MRIで脳をじっくり調べた結果、羽生さんとほかの棋士たちでは使っている脳の部位が違うことがわかったらしい。簡単な詰め将棋だけれども極めて短時間で答を選ばなければならない問題を出されたとき、羽生さんの脳は網様体が活発に反応していた。


ここがほかの棋士との違いだった(という内容だったと記憶する。が、もしかしたら居眠り半分だったので間違っているかもしれない)。


ポイントは、脳のどこを使っているかということ。以前、感性情報工学の先生に取材したときには、絶対音感を持っている人の脳の反応部位について興味深いことを聴いた。つまり絶対音感を持っている人とそうじゃない人では、音楽を聴いているときに反応している部位が違うのだという。これはおもしろいではないか。


なぜなら、絶対音感はかなり条件が限られているが、小さい時から訓練すれば後天的に獲得できるといわれているから。つまり、小さいときから特定の訓練を積むことによって、脳の特定部位を活性化(といえばいいのか鍛えるといえばいいのか、わからないが)できることになる。


ということは、仮に網様体を鍛える方法を見出すことができれば、もしかしたら羽生さんのような将棋の天才を育てることができることになりはしないか。


そこで話を大きく飛躍させると、日本の古武道とか伝統芸能の鍛錬法に何かヒントが隠されているような気がする。たとえば狂言家などでは、この子に後を継がせると決めれば、稽古を始めるのは6歳6ヶ月の時から、という話がある。昔は元服するのが16歳ぐらいだったことを思えば、ちょうど10年である。


稽古する時間がどれぐらいだったかは知らないが、仮に1日3時間程度だとすれば、ちょうど10年で1万時間になる。その稽古がどんなものなのか、詳しくは知らない。ただ古武道に似ていると仮定すれば、おそらくは最初は徹底的に型をたたき込まれるのだろう。いわゆる守破離の守である。


その動作は、人が普通に好きなように体を動かすのとはまったく異なり、あえてややこしい不自然かつ窮屈な動きだ。これが、もしかしたら脳のどこかの部位を鍛えることになるのではないか。あるいは脳のどこかで特殊な神経ネットワークを造るというか。


と、まったくの素人考えをふくらませていくと、昔の寺子屋教育にも大いなる意味が隠されていたのではないかと思ったりもする。特に漢文の素読み。これについては京大の先生も、絶対に意味があったはずだ、と断言されていた。う〜む、このあたり何かおもしろい。


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昨日のI/O

In:
『甦る怪物』佐藤優
Out:
大阪大学・石黒教授インタビューラフ原稿


昨日の稽古: