くそまじめな人が作るとカレーはこうなる



カレー一人前380円


「ふ〜ん、今どきカレーなんて、そんなもんなの」と思ったあなた! もし、京都におられるなら、ぜひ一度、西院は『太陽カレー』の夏野菜カレーを味わってみるべきです。


万が一、あなたがご自分のことを「カレー好き」と自認するのなら、これは絶対に食べてみなくてはなりません。おそらくカレーを好きな人ほど食べる値打ちのある一品です。ちなみに「いっぴん」と打って、最初の変換で出てきたのは「逸品」でした。このカレー、もちろん逸品と呼んでもまったくおかしくない。けれども、ここはあえて親しみやすさを込めて「一品」としておきます。


写真を見てもらえばわかるとおり、カレーにのっている野菜は三種類です。これ何だかわかりますか。


トマトはピューレ状に煮込んだもの。あとは一つがカボチャで、もう一つは、なんと新さつま。最初、何も考えずにナスビかなと思って口に含むと、口あたりがまったく違う。実にほくほくほっこりのお芋さんでした。


といっても、決して焼き芋のようなもったりとした感じはしない。あえて言葉にするなら、さくほっくり(さくさくとほっくりの中間ぐらいという意味ですね)感たっぷりとでもいえばいいのでしょう。これは素材と下ごしらえの勝利である。三種類の夏野菜は、いずれも無農薬野菜です。無農薬ということは、育てる人がじっくりと手間暇をかけているわけです。だから、まず野菜自体のうま味が濃い。


とはいえ、その野菜を生のままかじるわけじゃない。カレーにのせた時に、どんな味わいにすれば良いかを考えるのは、別の次元の話になります。そこで、この店のオーナーは考えた。切り方と火の遠し加減の組み合わせについて、何度何度も試行錯誤を繰り返したのではないか。そしてたどり着いた結果が、この形だったと推察します。


新さつま、カボチャ共に、普通のものなら、どちらかといえばもっさりした食感の野菜です。ところが無農薬夏野菜ともなると、しゃくっとした歯あたりのあと、すぐに野菜の味が口に広がる。トマトもうまく煮込んであるなあ。酸っぱからず、水くさからず、夏の味がする。


それらすべてを包み込むのが、特製のルーです。若鶏、赤ワイン、国産玉ねぎをベースに20種類のスパイス、チャツネ、ハーブ、ゴマ、昆布、山椒などのうま味が入っていて、創業以来ずっと継ぎ足しながら仕込んだものだそうな。確かに辛口、だけれど、ただ辛いだけじゃない。辛みとちょっと和のテイストを感じさせるうま味が、交互に口の中にやってくる感じがする。ピリッとした辛みを、まったりしたうま味がくるんでいる。


ここまでこだわって手をかけているのだから、たぶんご飯の炊き加減、水の塩梅まで工夫されているはずです。それはテーブルに運ばれてきた時のルーのかかり具合に象徴的に表れているのではないか。これも普通なら、ご飯は白でカレーとの見た目のコントラストを付けるもの。でも、どっちがうまいかを考えた結果が、これなんでしょう。


こうした推測がどこまで当たっているのか、その真偽のほどは話を伺ってみないとわかりません。けれども、一つだけ、確かなことがあります。


このカレーからは、やさしさを感じる。そのやさしさとは、作り手が真剣に考えて、工夫を凝らして、お客様に出すまでに時間をかけた料理が共通してもつ『やさしさ』です。やさしさの源となるのは、自分が作っている食べ物が、人の口に入るのだという自覚であり、自分が作ったものを食べる人に元気に、幸せになって欲しいという思いでしょう。


そうやって『くそまじめ』に作られたカレー、それが京都は西院『太陽カレー』の夏野菜カレーです。店内の木目を活かしたテーブルの大きさも、効率性だけを追求した店からは絶対に感じられない、ゆったり感があります。これも、おそらくはマスターのこだわりなのでしょう。



『太陽カレー』京都市中京区西大路四条東入ボイスビル1F

昨日のI/O

In:
『型』源 了圓
Out:
シンポジウム原稿

昨日の稽古: