写真販売サイト『オールスポーツ』の可能性


オールスポーツというサイトが注目である
http://allsports.jp/index.php


まさにネット時代、あるいはデジタル時代だからこそ可能になったビジネスモデルの典型だ。何をやっているかと言えば、まず全国各地で行われているスポーツイベントにプロ(レベル)のカメラマンを派遣して、写真を撮りまくらせる。そして撮った写真をサイトにアップして、希望者にプリントして売る。


プロが撮ったアマチュアの写真を売る。これ、ネットと写真データのデジタル化のメリットをフルに活用したビジネスモデルである。


シーズをうまくすくいあげてもいる。つまり各大会の参加者としてみれば、自分の写真は欲しい。もちろん親や知人が撮ってはくれるのだろうけれども、所詮アマチュアの写真でしかない。プロ(とアマチュアの違いはフレーミングに出る)が本格的な機材(特に大口径のズームレンズ)で撮るのとは違う。いちばんカッコいいタイミングを逃さずに撮ってくれた写真があれば、買ってもいいなと思うだろう。


ここに目を付けた。


そこでネットを使う。たくさんある写真(先日の空手の試合でも約3000枚)を、その大会の関係者に見せる手段として。もしネットがなければ写真を小さくして印刷したとしても、膨大なコストがかかる。現実的には不可能だ。仮に超低コストで印刷できたとしても、それを参加者に『送る』必要がある。やはり無理である。


ところがネットなら話はまったく変わってくる。参加者にサイトアドレスとパスワードだけを教えればいい。あとは見たい人が勝手に『自分から
アクセス』してくれる。自分の子どもをプロが撮ってくれた写真があるとなれば、たいていの親はとりあえずアクセスしてみるだろう。


つまりネットを使えば、告知コストはほとんどゼロ(もちろんサーバー代や写真データをフラッシュでサイトアップする手間などはかかるにせよ)である。


このビジネスモデルを支えるもう一つの武器がデジタルカメラだ。これまた撮った写真はデータとしてあるわけで、実際にプリントするまではハードコストはゼロである(諸々のイニシャルコストはかかるにせよ)。何千枚撮ったとしても、コストはカメラマンの日当プラスアルファ程度で済む。


そしてプリントするのは注文があったデータだけでいい。つまり在庫はゼロ、リスクが少ない。一大会あたり3000枚も撮っておけば、最悪でもカメラマンの人件費は出るだろう。そんな計算に基づいてのビジネスじゃないかと推測する。


もちろん、大会主催者の了解は得ているにせよ、個人の写真を承認なしに撮るわけだから肖像権の問題は残る。そこで不特定多数の人が勝手にみることがないように、大会ごとにパスワードを発行して制限をかけている。このパスワードは大会会場で配布されるビラに印刷されている。これで一応、特定者のみの閲覧という縛りをかけることができる。


また、掲載された写真を本人やその関係者が見て「自分の写真を載せるのはやめて欲しい」と思えば、非掲載を希望することもできる。といった案配でプライバシーへの配慮も考えられているようだ。なかなかうまいビジネスだし、これは大化けする可能性を持っていると思う。


が、残念ながら現時点では、二つ大きな問題が残っている。一つは価格。今のままでは高過ぎだ。最小サイズのキャビネ版で1050円、ワンサイズ上のA4版で3150円、最大のA1パネルなら35000円にもなる。プライシングについてはマーケティングリサーチをやった上での設定だとは思うが、仮にこの3分の1の設定だったら、販売数は今の数倍に上るんじゃないだろうか。ネット上での販売価格でミニマムプライスが1000円を超
えるのは、相当にハードルが高い。ちょっと試しに買ってみるか程度の動機では手を出さない価格設定だと思う。これが惜しい。


ここはお試し的に、もうワンサイズ小さいプリントでもいいから、もっと安い価格をつけておけばきっと売れるだろうに。またデータだけの販売があってもいいと思う。プリントは自分でやりますからデータだけくださいというニーズだってあるはずだ。たぶんカメラマンの著作権が絡んでいる問題なんだろうけれど、データニーズに対応しないのももったいない話だ。


そしてもう一つの問題は、サイトインターフェイスの悪さ。現場に派遣されるカメラマンが一人だけだから仕方ないのだろうが、時間帯で分類されているだけでは、お目当ての写真を探すのが大変だ。せめて選手のゼッケン番号別ぐらいのインデックスがあれば、もっと探しやすくなるのに。今のサイト構造では探す→ない→戻って探す、といったユーザーのサイト上での動線設計が極めて悪い。これも改善の余地ありだと思う。


が、問題点はあるにせよ、このビジネスモデルは可能性がある。全国のスポーツ大会の写真といったら『オールスポーツ』、そんなデファクトポジションを獲得すれば(すでに取っているのかもしれないが)、一気にブレイクする可能性を秘めている。




昨日のI/O

In:
『企業Webサイト構築 最新常識』
『Web屋の本』
『国家の自縛/佐藤優
Out:


昨日の稽古:

・立禅
・レッシュ式腕立て、腹筋

昨日のBGM