外食産業とタバコの付き合い方


減らす人48.5%


7月1日のタバコ増税に伴い、喫煙者でも今後、タバコを減らそうと考える人が半分ぐらいになった(日経MJ新聞7月5日)。「Yahoo!リサーチ」が実施したアンケート調査の結果で、そもそも喫煙者自体が回答者全体の29.3%だったという。


ネットユーザーが禁煙的といえるのかどうかはわからないが、とりあえずオフィスでパソコンを使って仕事をしている人たちにとっては、職場が禁煙である確率は相当に高いだろう。生活実感として自分のまわりでタバコを吸っている人は、3人に1人どころの割合ではない。空手関係の知り合いを計算に入れると、たぶん10%ぐらいのものではないか。


というぐらいに今や喫煙派は肩身が狭い思いをしているはずだ。タバコのポイ捨てが条例で禁止されたり、あるいは新幹線もいよいよ喫煙席がなくなる。もとより飛行機はすでにほぼ全面的に禁煙である。3年ぐらい前までは中国線の一部では喫煙可だったはずだけれど、今はたぶんダメだろう。


大きな流れでみると、禁煙へのパラダイムシフトが起こっているのは間違いのないところ。たとえば自分が子どもだった40年ぐらい前のことをふりかえってみれば、タバコを吸う人の方が圧倒的に多かった。女の人でも愛煙家(それもキセルなんかでとんとんやってる)が粋、などと思われたりもした時代である。そんなの今やとんでもないわけで、これをみてもタバコに対する一般的な考え方は、この間に大きく変わったことがわかるだろう。


そうした流れを受けて外食産業でも店内を禁煙にする所が増えた。先駆けとなったのがスターバックスだと思う。スタバは喫茶店(=コーヒーにタバコは喫煙派にとっては切っても切れない関係なのだが)であるにもかかわらず、店内を全面的に禁煙にした。相当に割り切ったコンセプトではあったけれど、これが受けた。その様子を見て外食業界全体に「禁煙にしても大丈夫なんだ」というムードが広まったのだと思う。


ところが最近、なぜか喫煙OKになる店が復活している。たとえばワタミ。食材を自社で生産管理するほど健康にこだわり、また家族向けの店作りを進めてきたにも関わらず、売り物の一つであった禁煙居酒屋をやめた。なぜなら深夜帯に客がまったく入らなかったからだという。なるほどね。


最近「わたみんち」が気に入っていて、道頓堀店、奈良店などへたまに行く。子どもを連れているからではなく、自分自身がタバコのニオイが気になる体質に変わってしまったので、基本的に禁煙席を求める。が、これが混んでいる。つまり禁煙席の割合が少ないのだ。昔はプカプカ吸ってたことを思えばずいぶんと勝手な話ではあるのだが、いざ自分が吸わない立場になってみると、食事中にタバコのニオイが漂ってくるのは決して快いものではない。


ここに日経MJ新聞が実施したもう一つの調査結果がある(日経MJ新聞7月3日)。主な外食場所に対して、喫煙派はどこでよりタバコを吸いたいか、逆に禁煙派はどこでより禁煙にしてほしいかを問うたもの。結果は喫煙派の「吸いたい」度が高いのは居酒屋が一番でコーヒーショップが続く。一方、禁煙ニーズが高いのはレストランが圧倒的で、意外にも居酒屋では「まあ、大目に見てやるか」といった案配になっているようだ。


ふ〜む。居酒屋=タバコの煙もくもく&ワイワイした活気といった刷り込みがあるのかもしれない。とはいえ、居酒屋でタバコが許容されなくなる時代が、意外に早く来るのではないか。


仮に自分が居酒屋の店長を任されたとして、禁煙・分煙・喫煙のいずれを選んでもよいと本部から指示された場合どうするか。立地によって客層が変わってくるから一概にはいえないが、オフィス立地ならとりあえず喫煙、郊外住宅地立地なら禁煙といった割り切り方をするだろう。そして仮にオフィス立地の場合でも客の様子を見ながら、禁煙へと踏み切るタイミングを計る。


居酒屋で吸いたい気持ちはわかるが、やはり喫煙層そのものが全体の3分の1しかいないのだ。しかも大きなトレンドとして社会全体が禁煙に動いていることも確実である。であれば、できるだけ早いタイミングで今後の多数派に付いておく方が得策だ。もちろん、どうしても吸いたい人のために店外に灰皿ぐらいは用意しておく。


これ、実は4年前に行ったニューヨークがそうだった。日本人向けの居酒屋でもタバコの吸える席はほとんどなく、吸いたい人は店の外まで行って一服する。もちろん公共の場ではほぼ全面的に禁煙となっている。たいていの場合、日本はアメリカの数年遅れで回っていることを考えると、いずれ日本の居酒屋も禁煙が当たり前になる時代がくるのではないだろうか。


今回の値上げをキッカケにさらにタバコ離れが進むのも間違いのないところ。やはり禁煙トレンドを踏まえて、そちらの方向に動くべきだと思う。あるいは今から逆張りを始めて、タバコをおいしく吸える居酒屋、なんてコンセプトでショップ開発を考えてみるのも一案かもしれない。あるいは、タバコを気持ち良く吸える場所、ということだけでもビジネスチャンスになるかもしれない。



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