QBハウス成功の原因は


10年で340店舗に成長


10分1000円ヘアカットのQBハウスである。年間利用客数は約950万人だから、単純平均なら1店舗で2万8千人、一月にならせば2300人ぐらいになる。


ところが平均を30%弱ほど上回る店が50店ぐらいある。そして、それらの店には立地で共通する点があるという(日本経済新聞8月4日)。どんな共通点だかおわかりでしょうか? ここでちょっと尊敬する板倉雄一郎さんのブログスタイルを真似させていただきます。












月間平均客数が3000人になっている店に共通するのは、トイレ前、もしくはトイレ脇立地ということ。普通に考えれば、お店を出す時にはできるだけ避けたい場所である。しかもヘアカットは清潔さをイメージとする業種である、トイレのそばへの出店などは「論外」だろう。がQBハウスが商業施設内に出店する場合は、あえてトイレ近辺立地を原則としている。なぜだろうか。


実はこれこそが顧客心理を突いた立地であり、しかもQBハウス独自のマーケティング戦略に基づいた立地となっている。


つまり

「トイレに入ると必ず洗面台の鏡を見る。ついでに髪もすっきりしようと思う」
日本経済新聞8月4日・「消費をつかむ」より)

というわけだ。


だからといって、では普通の散髪屋さんがトイレ近辺立地を真似してうまくいくかといえば、ことはそう単純ではない。QBハウスが成功したのは、独自のSTPモデルをもっていたからである。


まずS。セグメントについていえば、QBハウスが絞り込んでいるのは、あくまでも整髪である。髪が伸びてしまってうっとうしいからさっぱりとカットしてもらおうというニーズではなく、ちょっと気になるからサッと揃えてもらおうというニーズだ。この人たちはおそらく本格的なカットは、お気に入りのヘアサロンでやってもらうのだろう。どちらかといえば身だしなみに気を配らない人が「まあ、千円だからいいか」てな感じで髪を切りにくるのではなく、ヘアスタイルを気にする人が「ちょっと伸びてスタイルよくないから」と揃えにくる店なのではないか。


となるとターゲットは、時間の限られている人、すなわち圧倒的にビジネスマンである。もしかしたら「大切な商談の前には必ずQBハウスで、髪を整えていく」なんてジンクスを持っている人だっているかもしれない(あくまでも想像だけれど)。まあ、オッチャンサラリーマンの中には「ええねん、ええねん。髪の毛なんて、どこで切っても一緒や。ちゃっちゃっと切ったってえな」なんてお客さんもいるのかもしれない。


そしてポジショニングは、あくまでも「安い・早い」である。間違っても「うまい」などとはいわない。「6000円出すから一時間、きっちり仕上げたってえや。んで、こんな髪形がええねんけどな」などといって、雑誌のヘアスタイル特集の切り抜きなどを持ってくる客は、相手にしないのである(正確にいうとできないって話も聞いたことがある)。技術力を売りモノにしているわけではないので、これはこれでいいのだ。


とみてみるに、実にうまくニッチを突いたビジネスモデルだということもわかる。いま散髪屋さんが競っているのは、どちらかといえばサービスの分野だ。たとえば一人のお客さんに対してタオルを何枚使うかとか、髪を洗ったあとのマッサージにどれぐらいの時間をかけるかといったところが競争のポイントになっている。もちろん技術力がしっかりしていての話である。


そうした競争の土俵の中で、さらに価格競争をやっていたりする。とても厳しいのである。だからQBハウスはたぶん最初から、そんなところで勝負することはまったく考えてなかったのだと思う。むしろ髪を切るニーズだけにフォーカスして、ではどんなTPOが考えられるのか。この一点に絞り込んで詰めていったのではないだろうか。


その結果見つかったのが見事なまでの『ブルーオーシャン』だったというわけだ。そして、知名度が低いために商業施設に出店するときでも、悪条件の立地すなわちトイレ近辺しか与えられなかったことが、逆に成功要因につながった。立地が悪条件だということはテナント料も安いわけで、これは原価低減に役立っている。


やはり成功しているビジネスモデルはSTPがきちんと考え込まれている。逆に考えれば、成功したければ先行する成功モデルのSTPを分析して、それを自社の業界に持ち込めばどうなるかを考えればいいわけだ(というのは簡単なんですけれどね)。


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