予測変換の罠


またケータイの悪口になるかもしれないけれど


たとえば。
 ありがとう
 =
 受けない
 影響
 多い


自分のケータイで「あ」「い」「う」「え」「お」を順番に入力したときに、予測変換でもっとも上位に表示される言葉である。ちなみに「あ」で「ありがとう」に続くのは「新しい」「あられ」「あい」となっている。


このような言葉が表示されるのはケータイに搭載されている予測変換機能のおかげだ。前方一致検索とも呼ばれる入力方式で、入力した文字に応じて履歴や文脈から適切な単語をケータイが推測し、変換候補として表示してくれる。「あ」と一文字だけ入力した場合なら、前回の入力時に「あ」で選択された言葉が最上位で表示される。少ないキータッチで効率的に日本語を入力できるから、多くのケータイに使われている。


これがどれだけ便利か。仮に「ありがとう」をまともにケータイで入力するためには、一体どれだけのキータッチが必要になるだろう。普通ならいろんなキーを、たぶん18回押さなきゃならないはずだ。それがたったの1回で済む。1対17は画期的、いや革命的な進歩といっても決して過言ではない。


のだが、この機能をばんばん使ってケータイメールなどを書いていると、もしかしたら表現力が低下するのではないかと危惧するわけだ。たとえばメールである。パソコンを使ってメールを書くときと、ケータイを使ってメールを書くときでは言葉の選び方がまったく違ってしまう可能性がある。


最近はパソコンでも予測変換機能付きの入力ソフトが出ているようだけれど、基本的に文章を書く場合には
・その文脈に適した言葉を頭の中に思い浮かべる

・キーボードでその言葉を打ち込む

・漢字に変換し(もし漢字が複数表示されれば)適切なものを選ぶ
といった作業になるはずだ。


ところがこれがケータイとなると
・最初に言葉を思い浮かべる

・その言葉の最初の一文字を入力する

・その一文字で始まる言葉のリストの中から思い浮かべた言葉を探す

・見つかったら、その言葉を選ぶ
 (見つからなければ、続く文字を入力し言葉を探す
  この作業を思い通りの言葉が見つかるまで続ける)

・次は、まず『つながり候補』を見る

・そこに使えそうな言葉があれば、それを使う

・使える言葉がなければ、思いついた言葉の最初の一文字を入れる

・・・


もちろんこれは極端なケースである。そういつもいつも『つながり候補』に最適な言葉が見つかるとは限らないし、思い浮かべた言葉がケータイではなかなか表示されないこともある。特に漢字熟語などはそうだ。この場合は「最悪」一字ごとに漢字を変換して探していかなければならない。とても面倒である。面倒なことを人は好まない。


すると、どうなるか。


ついつい面倒じゃない方を選んだりしないだろうか。つまり面倒な漢字変換を必要とする、頭の中に思い浮かんだ言葉よりも、候補として表示された言葉の中から言いたいことになるだけ近い言葉を選ぶ。さらに、そうしたクセがついてしまうといつしか、言葉とは頭の中で思い浮かべるものではなく、予測変換に表示された候補の中から選ぶものとなる。


というのは、あくまでも仮定の話だし、それも極端に極端を重ねた例ではある。けれども文章を書くこと=ケータイでメールをやり取りすること、となっている一部の人たちにとっては、その語彙力の形成や文章構成力に将来、支障をきたす恐れがあるかもしれない。


実際のところ、たとえばケータイで頻繁にメール(仕事以外の要件で)をやり取りしている人たちのメールっていま、どんな言葉が使われていて、どんな文章構成になっているのだろう。これって、もしかしたらとても興味深い研究テーマだと思うのだが、どなたか研究されていてる方はおられないのだろうか。




昨日のI/O

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昨日の稽古:西部生涯スポーツセンター

・基本稽古
・約束組手(前蹴りに対する受けからの返しをいろいろと)