アメリカ16年周期説


クリントン登場からオバマ登場まで16年


アメリカの歴史は、それにつられる日本の歴史も連動して、16年周期で動いているのではないか。16年前の1993年、アメリカではクリントンさんが大統領に就任した。パパ・ブッシュ共和党から民主党へと政権交代が行なわれたわけだ。ちなみにパパ・ブッシュは、イラクのクェート侵攻に対して湾岸戦争を仕掛けている。


いや、思い出しても腹が立つぞ。この湾岸戦争のおかげで、当時勤めていたデザイン事務所の社員旅行が吹っ飛んだんだから。すっごく楽しみにしていたのに、何もこんなときに、わざわざ海外に出かけなくともいいじゃないか、という声が出た。めっちゃ楽しみにしていたのに、くそ!


という個人的憤慨はさておき、アメリカの歴史を振り返ってみたときに奇妙な一致があることを今日、ある人に教えてもらった。パパ・ブッシュが戦争を起こし、にっちもさっちもいかなくなって(と言うほどひどい状況ではなかったが)、クリントン氏が颯爽と登場した。就任早々彼がゴア副大統領とともに打ち出したのが『情報スーパーハイウェイ』構想だ。


これによりアメリカは一気にIT化へと舵を切り、見事にITバブルの花を咲かせた。その後バブリーな展開があったとはいえ、その後のネット世界は完全にアメリカの一人勝ちである。世界のネット技術はアメリカ発のものが圧倒的に多い。


やがてアメリカはITから金融工学へと手を広げ、16年後の破綻へと行き着いた。そもそもサブプライムローンは、クリントン政権時代に始まっているはずだ。しかしクリントンさんのアメリカは、経済的には強いアメリカの時代だった。ITバブルが崩壊し一時的に落ち込みはしたが、双児の赤字を解消もし、経済は極めて順調にまわっていた(ように見えた)。何しろもっとも高いときには1ドルが140円ぐらいしたのだ。景気が良くて経済も好調、だからサブプライムローンが抱えている時限爆弾も沈黙していたのではないか。


ところが次に登場したブッシュさんがいかにもお粗末だった。そもそもその成り立ちからして、本当はゴアさんに負けていたんじゃないかと後ろ指を指されての登場だ。当初のブッシュ政権にとって、何よりの課題は求心力の確保となる。


穿った見方かもしれないが、求心力を得るために何とかして外敵を作る必要があったのではないか。と考えるなら、ブッシュ政権誕生直後に中国近海で哨戒機が領海侵犯したとかで(うろ覚えです)もめたのは、あえてトラブルを起こしたかったからじゃないの、と勘ぐりたくもなる。


求心力が欲しければ外敵を作れ。これは洋の東西を問わず、また時代も問わず権力者が頼りたくなるセオリーだろう。中国だって国内事情がごたごたしてくると、すぐ反日を煽ったりするわけだし。


ところが、哨戒機事件はどちらかといえばブッシュ・ネガティブの方向に作用した。クリントン時代には米中関係はそれなりに良好だったのだ。それをいきなりケンカをふっかけるのはいかがなものか、というのが米国の大勢だったのだろう。もしブッシュさんがこれを意図的やったのだとしたら、完全な失敗に終わったわけだ。


ところが、続いてまるでおあつらえ向きのようなアクシデントが起こる。2001年の9.11である。高層ビルにジェット機が突っ込むという、極めてビジュアルショッキングな出来事は、アメリカ国民の心を一気に一つにまとめあげた。ブッシュ大統領が何より欲しかった強烈な求心力が一挙にわき上がったのだ。


まだリスクがあることを承知で(もしかしたら、もうリスクはないことを知っていたのかもしれないが)事故現場をいち早く視察したブッシュ氏は、これから始まる憎き許されざる敵との戦いを率いる米軍の総司令官、ヒーローである。米国民はブッシュの元で一致団結し、アフガニスタンに侵攻し、さらにはイラクに攻め入った。


ところがイラク侵攻は、まったくの泥沼となる。落ち込んだ悪夢的状況からアメリカは、未だに抜け出せていない。そして世界はブッシュ・ジュニアのおかげで確実に悪くなった。幸いにして日本でこそまだ起こっていないが、今や世界中のどこでも無差別テロが起こる可能性がある。9.11以降、一体どれだけ多くの人が無慈悲なテロで命を失ったことだろう。9.11こそは後に続く大量殺人自爆テロのトリガーとなったのだ。


そのブッシュ政権末期は、アメリカ凋落の時代である。昨年後半からの流れは、そうとしか見えない。これもパパ・ブッシュ末期と似てはいないか。そうやってほぼどん底に近い状態まで落ちきったアメリカに、再び颯爽と登場したのが民主党の若いオバマ氏というわけだ。クリントン氏も就任時は若かったが、オバマ氏にはもっとフレッシュなイメージがある。しかも、米国史上初の黒人大統領である。人々に期待を抱かせるシンボリックな存在だ。


勝手な推測だけれど、もしオバマ氏が大統領候補としてピックアップされていなかったら、先の選挙で誕生していたのはおそらく『史上初の女性大統領』だったはずだ。それぐらいのニュース性が、どん底に落ちたアメリカ復活には必要だ。


そのオバマ氏は早速『グリーン・ニューディール』政策を打ち出した。1993年の『情報スーパーハイウェイ』構想は、あまりに先進的過ぎて多くの人には最初その意味がわからなかった。しかし、その後の世界はアメリカの思う通りに変化していった。


そして今回オバマ氏が取り組むのがエコ、である。情報ハイウェイほど革新的ではないにせよ、エコが今後の世界にとって最重要なテーマであることに異を唱える人はいないだろう。つまり情報ハイウェイ&ITで世界をリードしたアメリカが、今度はグリーン・ニューディール&エコで世界をリードしようとしているのだ。


16年前のクリントン&情報ハイウェイは見事に成功したが、今回はどうなるだろうか。クリントン政権スタート時に日本で起こった政権交代(いわゆる55年体制の崩壊)も重ね合わせて考えてみると、この先、もう一つ奇妙な一致が起こりそうな予感もするのだが、仮にそうなったとき、その先は何が待っているのだろうか。


仮にグリーン・ニューディールアメリカが復活したとしても、米国債バラ撒きによるツケはとても大きい。そのツケがまわってくるまでに必要な年月は16年もかからないのではないだろうか。



昨日のI/O

In:
福島敦子さん、中村伊知哉教授対談取材
Out:
K社取材ラフ原稿

昨日の稽古: