使えるノウハウを明かす勇気
- 作者: 跡部徹
- 出版社/メーカー: 日本実業出版社
- 発売日: 2010/03/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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このエントリーは、R+さんから送っていただいた献本『「空気読み」企画術』についてのレビューです。
2379字
本を読んだ後は、できる限り抜き書きやメモを書くようにしている。やり方としては、まず読みながら「これは!」と思ったことが書いてあるページの上の端を折る。
読み終わったら、折ったページを片端から読み直していく。このときは流し読みである。最初読んだときには納得感があった文章でも、時間を経て読み直すと、それほどの意味を感じないこともよくある。このスクリーニングを経てもなおメモする価値のある文章だけを入力していく。
エディターに入力してファイル保存し、さらにevernoteにタグをつけてコピーしておく。こうしておくと後で資料として使うときに、検索しやすくて便利だ。
仕事柄、本は毎月たくさん読む。飛ばし読みも入れると一月に30冊は読んでいるだろう。取材相手が書いた本があれば目を通しておくし、新しいクライアントとのミーティング前にも、相手業界に関する資料を読み込む必要がある。もちろん既存クライアントから新しい企画提案を求められれば、関連情報を仕入れておかなければならない。
が、こうした本のメモを取ることはあまりない。さらにいえば、巷にあふれるノウハウ本のテキストを入力することも、それほどない。わざわざメモを取るのは、本気で関心を持っている分野の本か、あるいは後々何かを考えるときのタネとなる本、そして生きていく上での糧となる本である。
その意味では、この『「空気読み」企画術』を読んで書いたメモの文字数は、かなり異例だ。それぐらい本書の内容には企画に関わるものとして『使える』視点がたっぷり書かれている。自分が不勉強にして知らなかっただけ、という可能性もあるが、いくつか挙げてみる。
ロジャーズの「普及理論」といえば「あぁ、あの曲線のことね」とおわかりになる方も多いだろう。要はロジャーズという学者が
消費者の商品購入に対する態度を新しい商品に対する購入の早い順から、1.イノベーター=革新的採用者(2.5%)、2.オピニオンリーダー(アーリー・アドプター)=初期少数採用者(13.5%)、3.アーリー・マジョリティ=初期多数採用者(34%)、4.レイト・マジョリティ=後期多数採用者(34%)、5.ラガード=伝統主義者(または採用遅滞者)(16%)の5つのタイプに分類しました。(→ http://www.mitsue.co.jp/case/concept/02.html)
正規分布図のような曲線を描いて、左からイノベーター、オピニオンリーダー(アーリーアダプター)と続くわけだ。そしてプランナーなら大切なのは、イノベーターやアーリーアダプターの動きに注意することと教えられる。ところが本書では注目すべきは「レイトマジョリティ層」であると説く(本書、111P)。
なぜなら、トレンドには必ず揺り戻しがある。次のヒットの芽は、今流行っているモノの逆にある、からだ。レイトマジョリティの動きこそが、その揺り戻しの指標になるのである。この見方は筆者には、かなり新鮮だった。
あるいは雑誌の読み方「ラテラル・リーディング・トレーニング」も、やってみようと思わせる。とりあえず本屋に行って雑誌を5冊買って読み、時代を掴むためのトレーニング手法である。といえば、同じジャンルの雑誌を読んで、差異を比べるのかと思えば、さにあらず。
まったく異なるターゲット、ジャンルの雑誌を5冊買うのである。そして表紙コピーとビジュアル、記事の切り口と造語、特集の切り口から、感心したのは読者アンケートの項目までを一覧で比較せよという。それぞれに意味がある。読者アンケートの項目を見れば、たとえば職業欄や属性からその雑誌ならではのターゲットの切り方が見えてくるだろう。
もしかすると、筆者がこの本で何より言いたかったことは、視点を固定するな、ではないだろうか。空気を読むためには、可能な限り広く世の中を捉える必要がある。そのためには、逆を考えたり、まったく異なるターゲットを狙った雑誌を同時並行的に読んだりして、自分の頭なり視点なりを相対化しておくことが必要。そんなメッセージがしっかりと伝わってきて、しかもわかりやすく使える実例と一緒に紹介されている。
よく、ここまで自分のノウハウを包み隠さず明かしたものだ。プランナー、マーケッターをめざす人なら、読んでおくべき一冊だと思う。
昨日のI/O
In:
『虚空』ロバート・B・パーカー
Out:
S社社長様インタビューメモ
昨日の稽古:
腹筋