携帯2.0が始まる


9227万台


2006年4月末時点での、携帯電話の契約台数である(日経新聞5月12日)。仕事の必要上、一人で2台持っている人がいることを計算に入れても、普及率は相当に高い。単純に数だけでいえば、20歳以上人口数のほぼ9割(平成16年の成人人口が約1億300万人)に達している。
http://www.winery.or.jp/Statistics/table.html#table4


ただ年間の純増数は500万台程度、90年代後半の半分ぐらいのペースに落ちており、携帯電話そのものの市場は飽和状態に近づいているといわれる。が、そんなことはなくて携帯市場の未来はまだまだ明るいと思う。むしろ広い意味での携帯マーケットは、これから始まる。ハードメーカー(買い替え需要が必ずある)から携帯インフラを使った新ビジネスまでいくらでもチャンスはあると思う。


理由はいくつかあるが、まず第一は通信速度の進化だ。少なくとも今の10倍ぐらいにはなるだろう。パソコン/インターネットの世界で起こったのと同じようなブロードバンド化が、携帯でも起こるのは間違いのないところ。そうなったとき、つまり今より重いデータをさくさくやり取りできるようになったときに、何ができるかである。


次に放送と通信の融合が、もっと進化すると。いわゆるワンセグは、すでにパソコン/インターネットの一歩先を進んでいる。とはいえ今のワンセグは、まだまだ本来持てるポテンシャルの10%も使えていない。これが本格化すれば(回線の高速化とリンクした話になるだろう)、いろんな可能性が生まれるはずである。エンドユーザー向けのサービスばかりが注目されているが、BtoBの世界でも使い道はあるはずだ。


さらには、携帯に積むハードディスクの大容量化も進む。すでに音楽携帯などでは4GBで2千曲ぐらいを収録できるタイプが出ている。大容量ハードディスクを積んだモデルが出れば、ビジネス用途だけでなく携帯型動画再生メディアとして使えるようになるだろう(iPodに携帯機能がついたようなイメージですね)。もちろん、その時点では画面サイズも大きくなっているはずだ。ここでも新しいビジネスが生まれる。これまたBtoBのジャンルでは未開拓分野だと思う。


そして、このような高機能化が進めば、消費電力の問題がクローズアップされてくる。いくらいろんなことをできても、すぐに電池切れとなってしまっては実用性に欠ける。ということで携帯用電池の研究・開発は燃料電池が実用化寸前のところまで進んでいる(と勝手に思っている)。


トドメがユーザーコストである。携帯のコストはまだまだ高い。特に高いのがランニングコスト。とはいえここも低価格化、定額化のトレンドが逆行することはまず考えられない。これもパソコン・インターネットの歴史を少したどってみれば、簡単にわかる。ごく近い将来には、そこそこのコストで24時間つなぎっぱなし状態になる。


そのとき、何が起こるのか。


以前からしつこく繰り返している携帯=24/30メディア(24時間ネットにつながりっぱなし、かつ30センチ以内にあるメディア)はおそらく、コミュニケーションのありようを変える。最近、この言葉を少し使い過ぎの感があるが、コミュニケーションに関して『パラダイムシフト』が起こる。


ここでいうコミュニケーションを人と人の間のもの、と考えてしまうと多くのビジネスチャンスを見落とすことになる。むしろ注目すべきは、人と機械とのコミュニケーションで起こるパラダイムシフトだろう。その兆候はすでに出ている。


携帯が定期券になった。携帯がお財布になった。携帯がポイントカードになった。携帯がクーポンになった。携帯がチケットになった。


これらはすべて人と機械の間を媒介していたモノが携帯に置き換わった事例だ。要はどんなモノを携帯に置き換えれば、ユーザーに価値をもたらすかを考えればいい。携帯は何にでもなり得る魔法のツールである。しかも、そうしたものが携帯に集約されていけばいくほど、ユーザーメリットも増える。


そうなると、たぶんセキュリティ関連でも新たなマーケットが生まれるだろう。


これまでの携帯の進化は、ハードそのものの進化だった。それは携帯にカメラがついたり、音楽プレイヤーの機能がついたり、あるいはゲームができたりといった機能で、これらは基本的に一つの携帯単体で完結する。しかし、今後は高速・大容量・つなぎっぱなし・定額といった進化を受けて、携帯がコミュニケーションメディアとしての新しいフェーズに入る。


ここで何をやるか、である。
携帯関連で、ここ2、3年の間にどんなビジネスが生まれてくるのか。
携帯2.0が始まる。


<オマケ>
ついでにいっておけば、携帯関連で新しいビジネスを考えるときには、日本だけでなく少なくとも中国、あるいは韓国での同時あるいは横展開を視野に入れておいた方がいいのかもしれない。


中国は携帯に関して超・有望市場である。彼の地の人々は日本人と同じく手先が器用なので、携帯の小さなキーボードを使いこなすのに苦労しない。しかも携帯の世界ではすでにチャイナクロスが起こっている。もっといえば固定電話を知らずにいきなり携帯を使っている人の方が、たぶん多い。携帯の新しい使い方を、まったく抵抗なく受けれいる素地は十分にある。



昨日のI/O

In:
自立循環型住宅に関する取材
Out:



昨日の稽古: