バンド、恐い


全国のゲーセンに約700台


ギターフリークス』なるゲーム機の設置数である。同じ音楽系ではコンガやキーボードの体験ゲームもあったそうだが、演奏姿が地味なために受けなかった。唯一受けたのがギター。やはり憧れはギターなのだ(日経MJ5月19日)。


いまの40代はロック第一世代である。仮に60年生まれなら(私のことだけれど)、小学校時代にテレビで『モンキーズ』を見ていた人が結構いるんじゃないか。ビートルズはリアルタイムじゃないにせよ、たとえばジョン・レノンの『イマジン』なら小学校5年ぐらい。そして中学校に入る頃には、レッド・ツェッペリン、ディープ・パープル、クィーンからプログレ系だとキング・クリムゾンにイエス、あるいはELPと。一気にロックがメジャーになった時代を過ごしているはずだ。


そんなロック少年の憧れはもちろん「バンドやろうぜっ」である。文化祭デビューをめざして、一学年100人足らずだった同級生の中からも4つぐらいのバンドができた。


とはいえロック大好き、ギター大好きなんだけれども、みんながバンドに入れてもらえるわけじゃない。そういう奴はどうするかというと、まあ家でアコギでも買って鳴らしていたわけです。どんな曲をやるかといえば、たとえば『ハイウェイ・スター』のギターソロの早弾きをやってみたり(うまく弾けなくて落ち込むのだけれど)、ツェッペリンの『天国への階段』のイントロのところだけをやってみたり。


あるいはクラシック系にいってイエスの『ムード・フォア・デイ』をやったり(これは意外と簡単)、ELPの『賢人(展覧会の絵に入っているギター&ボーカルの名曲ね)』にトライしてみたり。とりあえずちゃんと弾けないけれども、なぜかバンドスコアをいろいろ持っていたり。


要するに機会さえあれば、いつでもギタリストなってやっからな、みたいな気概だけはなくしていなかった。そして実は社会人になってから5回ぐらいスタジオにいった経験がある。


大学のときの連れが相当達者なベーシストで、たまたま知り合いのコピーライターから「ベースできる奴、おらへん?」と相談を受けたとき、そいつを紹介したのがキッカケだ。「自分もギター弾けるんやったら、一緒ににやろうや。みんな、全然下手やからテクニックなんて気にせんでええし」なんてお誘いを受けて、いきなりスタジオデビュー。


確かになかなかに和気あいあいとしたバンドで楽しかった。一応ギターソロなんかもやらせてもらったけれど、もちろんそんなのまもとには弾けるわけない。スケールに合ってんだか合ってないんだかよくわかんないシングルノートを連ねて、チョーキングもビブラートもまったくなしね。それでええやん、みたいなノリで『The Harder they come/ジミー・クリフ』とか憂歌団とかスローテンポな曲を何曲か楽しんでいた。


ところが、連れのベースはそんなんじゃ物足りないから、自分で仲間を捜してきた。これが妙な奴らで現役ポリスマンのドラマーに自衛隊兄ちゃんのギタリストという面子。あとでわかるのだけれど、こいつらみんな超絶テクニシャンである。なのに、なぜか「お前も一緒にやろうよ」と誘ってもらった。よく考えればスタジオ代は3で割るより4人で割った方が安いということだけでよばれたってことがわかるのだけれど、時遅しである。


そりゃスタジオ行こうぜって話が来るとうれしいわけで、いそいそ出かけて似非ギタリストは打ちのめされましたね。「じゃあ、一曲目はエアロの『Walk this Way』から」って、知ってるけど、弾けへんやんそんなん。と抗議すると「大丈夫。君のギターのボリュームは思いっきり下げてあるから、わかるコードのところだけ入ったらええよ」って。そりゃないでしょう。


でも、みんな、めっちゃうまい。すっげ〜ドライブしてる。ちくしょー、オレもやりてぇ〜。そんなにコードも難しくないから、もうちょっとで入れそうとなったところで、二曲目。「次はJeff Beckね。『Red Boots』いこか」で、完全ハミコとあいなった。それ、無理ですよ。こいつら、仕事もやらんと楽器ばっかり触ってるんちゃうかというぐらい、メチャウマで、まあスタジオ代払っても元はとれたかなぐらいには思った。


が、それ以来、スタジオには行っていない。くだんのベース君もさすがに悪いと思ったのか、二度と誘っては来なくなった。


そこで『エアギター』である(あ〜、長い前ふりで申し訳ない)。


これぞ、もしかしたらギタリストに憧れ、でもギタリストにはなれなかった元・ギターキッズの夢を叶えてくれる最終兵器ではないか。何せギターを弾く『ふり』だけで競うのだ。それって、めっちゃオバカじゃないのってツッコミはあたらない。だって、やってる奴はみんな同じトラウマを抱えているんだから。


ギタリストになりたい。でも、なれない。そんな奴ばっかりが集まって、ギターを弾いているふりのうまさを競い合う。究極の同類相哀れむ世界だけれど、これがいまや世界大会まであるという。そのための教則DVDも発売されている。


さすがにこの歳になって、エアギターはやれないけれど、やってる奴の気持ちは実によくわかる。トラウマ解消は確実にビジネスになる、エアギターは、その証の一つということなんだろう。


昨日のI/O

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昨日の稽古:西部生涯スポーツセンター・ダンススタジオ

 ・組み手立ちでの移動稽古
 ・ミット稽古
 ・突き、下段を体で受ける稽古
 ・組手稽古
 ・ミット稽古(各自で)