auは漁父の利を得るか


53%vs26%vs16%


上から順にNTTドコモKDDIボーダフォンと並ぶ。これが携帯電話とPHSを合わせた契約者のシェア状況だ(日経新聞4月24日)。


クープマンの目標値でみれば、
NTTドコモ =53%:相対的安定シェア(41.7%)をクリア
au(KDDI) =26%:市場影響シェア(26.1%)
ボーダフォン=16%:並列的上位シェア(19.3%)にやや足らず


ということでドコモが圧倒的に優位。トップシェアがここまでくると、まず逆転は起こらない。これがクープマンの理論である。しかし、こと携帯マーケットに関してはいま、理屈では説明できない巨大な地殻変動が起こりつつあるのではないだろうか。


これを引き起こしているのはボーダフォンだ。ソフトバンクの買収によって同社は、ブロードバンドで攻めると宣言している。そのやり方はおそらく、ADSLソフトバンク(=YahooBB)が採ったのと同じだろう。つまり一定期間は採算度外視でユーザー獲得に突っ走る戦略である。


そのための絶好のチャンスも見えている。この秋に実施されるナンバーポータビリティ制度だ。携帯電話の番号はそのままにしておいて、キャリアを自由に変えることができる。これによって一定数のユーザーのドコモ離れが必ず起こる。そこを虎視眈々と狙っているのがボーダフォンだろう。


では、KDDIはどうか。これが実に巧妙に漁父の利を狙う戦略で走っているのではないだろうか。その証と思えるのがGoogleとの提携だ。表面的には単なる検索サイトとの提携だが、その裏ではKDDIにとっては極めてドラスティックな戦略転換が行われたのだと思う(日経産業新聞5月19日)。


すなわち公式サイトから得られる収益から、広告料収入への転換だ。Google検索を利用できるようになれば、検索結果には当然、公式サイト以外のサイト情報も表示される。ユーザーにとっては、より多くの選択肢を選ぶことができる一方で、公式サイトにとっては、モロに打撃となる。それをわかった上でKDDIは、あえてユーザー志向に向けて大きく舵を切った。


これがドコモにとっては、実に弁慶の泣き所を突かれるような戦略となる。なぜならドコモこそは公式サイトによって支えられているからだ。支えられている限りドコモが公式サイトを切り捨てることは、おそらくできないだろう。すなわちユーザーサイドからみれば、ドコモユーザーである限り公式サイトしか選択肢がないことを意味する。


ドコモが置かれている状況は、まさに『成功のジレンマ』的である。


ここにボーダフォンがゲリラ的に価格破壊で攻めてくる。これまたドコモにとっては、極めて厳しい攻め手となる。なぜなら脱皮しつつあるとはいえ、ドコモにはまだ公社的体質が色濃く残っている。後発に比べれば、どうしても高コスト体質であることは否定できないだろう。だから価格競争はできる限り避けたいのが本音のはずだ。ボーダフォンの打ち手はドコモの急所を突いたものとなる。


ソフトバンクと提携前のボーダフォンは、ナンバーポータビリティ制度が実施されたとき、もっとも弱い立場におかれると考えられてきた。まさにドコモとKDDIの「草狩り場」という表現も見かけられた(日経新聞4月24日)。


しかし、実は草狩り場となるのはドコモではないのか。
そして、ボーダフォンとドコモが激しく争えば争うほど、漁父の利を得るのがKDDIではないのか。


そんな予感がする。


ただしドコモにも一筋の蜘蛛の糸はあると思う。キャリアを変えるときに携帯の番号を気にするのは、おそらくビジネスユーザーだ。仕事で使っている番号を変えるのは、相当に面倒なことになる。だからビジネス系のユーザーを、どうやって引き止めるのかがドコモの課題となる。


一方でビジネスよりもプライベートユースが多いユーザーにとっては、実は電話番号よりもメールアドレスの方が大切なのではないだろうか。つまり携帯電話をどんな用途に使っているかという話だ。電話で話すよりメール多く使うユーザーにとっては、少なくともこの秋のナンバーポータビリティ制度はあまりメリットを感じない可能性もある。


もちろんKDDIボーダフォンは、そこが狙い目となることも理解しているはずだ。すなわちメアドが変わるときのユーザーの不便さを解消するサービスが、キャリア切り替えのカギになる。いろんなサービスが出てくるだろう。


これから秋にかけての半年足らずの携帯各社の動きは、とても興味深い。これこそマーケティングを学ぶ上で絶好のリアルタイムケーススタディ、しっかり見ておきたい。



昨日のI/O

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昨日の稽古:

 カーツジョグ(やはり上り坂が、めちゃきつい)